第十一回「あちらへどうぞ」
ある放課後、Kさんたちは遊び仲間である同級生Mの家に遊びにいった。皆でゲームでもしようと言われ喜んだのも束の間、出鼻をくじくように「テレビのリモコンをなくした」とMは言った。仲間は口々にツッコミを入れたが、当のM本人はリモコンを探そうとはせず、じっと座ったまま動かない。それどころかよく見ると瞼まで閉じている。しばらくしてゆっくり立ち上がった彼は、おもむろにベッドと壁の隙間に腕を伸ばし、リモコンを取りだしてみせた。
「探しものを思い浮かべながら目をつぶると、真っ暗な視界に手だけ浮かびあがって見えてさ。それが指差しで場所を教えてくれるんだ」。聞いたこともないようなことをMは言った。
Kさんたちはゲームそっちのけで、Mを部屋の外に出し、適当なものを別の場所に隠してMに探させた。彼は恐ろしいほどの正確さですべてを見つけ出した。「別に普通だよ。まあ、お盆の時期はなぜか手が海のほうを指し続けるから、海に行かなきゃいけない気がしてきて気持ち悪いけど。それ以上変なこともないし」。
後日KさんがMを心霊スポットのトンネルに連れていったときは「だめだ、手が増えた」と言って帰りたがったという。