浜やん(吉祥寺)
死活の酒場か、はたまた死活の飯場というべきか。兎にも角にも、吉祥寺に〈浜やん〉在り。初めて訪れた12年ほど前、ざっくばらんとした居心地の良さとご飯の美味しさに、胸を衝いたのは「なぜもっと早く来なかったのか」という後悔。
私が吉祥寺で商いを始めて今年で21年、ということは〈浜やん〉知らずの9年は蝉の幼虫期の様なものでありましょう。もし運良く看板を見つけられたなら、その足元へ続く階段を下りていくといいでしょう。先に待つのは、遠くまで来た様な旅感と旅から戻ってきた様な家感。温かい大根煮、明日葉の天ぷら、そして島寿司……。シークワーサービールから始めて、「島の華」「島流し」と徐々に焼酎の度数を上げ、最後は酸味の効いた独特の風味が特徴の「青酎」で〆。
大将とご家族のさりげない気遣いも接客が生業の私にとって大きな学びです。じわりじわりテーマパーク化していく吉祥寺にどすんと打ち込まれた太い楔、それが〈浜やん〉です。