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斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」第4回『学園戦記ムリョウ』

30代サブカル声優・斉藤壮馬が、10代のころに耽溺していたカルチャーについて偏愛的に語ります。毎月20日更新。

photo: Natsumi Kakuto(banner),Kenta Aminaka / styling: Yuuki Honda(banner) / hair&make: Shizuka Kimoto / text: Soma Saito

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声優・斉藤壮馬

「えー、宇宙人は、実はいました」

ゆるくユーモラスなこのイントロダクションに、さっそくぼくの心は掴まれてしまったのだ。

学園戦記ムリョウ。
今回はこの作品について語りたい。

最初に出会ったのはおそらく、舞城王太郎氏の『煙か土か食い物』と同じく、高校1年生のころ。学校に馴染めず、数ヶ月引きこもっていた期間だったと思う。

2070年、人類が今よりも少しだけ精神的に成熟した世界。狂言回しである中学生・村田始(むらたはじめ)の通う中学校に、時代錯誤な学生服を着た転校生・統原無量(すばるむりょう)がやって来る。

彼らの出会いが、やがて日本のみならず、地球全体を、そして宇宙をも巻き込んだ壮大な物語へと繋がっていく。

……のだが、そんなシリアスなストーリーが展開されていく一方で、彼らはどこかのんびりとしている。

文化祭や体育祭に情熱を傾けたり、夏休みに旅行をしてはしゃいだり、なんでもない日に集まってパーティーをしたりする。

大人も子供も人間も宇宙人も、みんなそれぞれ穏やかで、余裕がある。その雰囲気が、昔も今もたまらなく好きだ。

声優・斉藤壮馬

さて、そのように大好きなこの作品だが、今回改めて観返してみて、自分の感じ方や視点の変化に大いに驚かされた。

初見時は主人公たちとほぼ同年代だったから、自分も彼らのように成熟していて、ユーモアや知性があるのだと、ある種背伸びをして観ていた。

今考えるとそれこそが未熟さの証左のような気もするが、もしかしたらそう思うことで、不安定な自分を鼓舞していたのかもしれない。

けれど今回、30歳を過ぎて触れてみると、主人公たちの素敵さはもちろんのこと、周りの大人たちのあたたかいまなざしに、目頭が熱くなった。

作中では繰り返し、角度を変えて、「これまで」と「いまここ」と「これから」が語られる。それは途方もなく長いあいだ受け継がれてきた星の記憶であり、家族や友への愛だ。

あのころはそこまで意識して観ていなかったけれど、きっとぼくは、この作品で描かれているのは決して作り物の感情ではないのだと、本能的に気がついていたのだと思う。

そして、今ならもう少しだけ、その先についても考えられる。ただ無自覚にもらうばかりの期間はもう終わり、これからは自分もまた、次へとつなぎ、託していく時期に入っているのだと。

ちょうどこの作品を、8月31日に観終えた。

仕事の合間、たまたま通りがかった小学校はひっそりと静まり返っていて、なぜだろうとしばらく思案したのち、合点がいって苦笑した。

2070年まで、あと50年ほど。自分はそのときまでに、どんなふうに生きて、何を次の世代に伝えられるだろう。

そんなことをふと考えた、夏休み最後の日だった。

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