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“ととのう”先に、何がある⁉佐賀で、サウナで、果たして人生は変わるのか。 文・マキタスポーツ

今、全国のサウナーが憧れ、詣でる〈らかんの湯〉。擁する佐賀県には、まだまだ訪れるべき施設がある。サウナを愛するマキタスポーツさんが、一肌脱いで5軒を行脚します。“ととのう”先に、何がある⁉「マキタスポーツが行く佐賀県のサウナ5選。未知なる感覚を切り拓く、神聖地巡り」を見る。

photo: Yukino Nakanishi / text: Makita Sports, BRUTUS

文・マキタスポーツ(芸人、ミュージシャン、俳優)

佐賀で、サウナで、
果たして人生は変わるのか。

ライブ前でせわしなくしていた春先、『ブルータス』から佐賀県のサウナを回ってみないかと甘い誘いを受けた。聞けば、特集名には「人生変えちゃう」とあるらしい。旅で人生が変わるなど、考えたことがない。今回は少しでも大好きなサウナを体験できればいいな、と思って旅に出た。

まずは〈御船山楽園ホテル らかんの湯〉。3年連続“サウナシュラン”受賞という殿堂的施設だ。入口をくぐるといきなりチームラボの煌びやかなインスタレーション。早くも面食らいながら、ドライサウナへ。ほぼ暗闇で、かすかな隙間から射す光がミステリアスだ。と、どこからか鳥の声が。

聞けば、山の麓にマイクを仕掛け、スピーカーからライブで音声を流しているとのこと。そのこだわりに慄く。続いて目玉の薪サウナへ。柄杓で煙突に向かって豪快にロウリュすると一気に室内の温度が上がり、大粒の汗が体を覆う。

駆け込んだ水風呂も好みの16度くらいで大変満足。素っ裸のまま、ラグジュアリーな休憩室で特製プリンに舌鼓を打つ。その空間にはちょっと不似合いな“ととのったおじさん”もちょっとインスタレーション的?

〈御船山楽園ホテル らかんの湯〉
「BIGな薪ストーブ前で、存分に熱を巡らせる!」

続いて、〈唐津シーサイドホテル 東館〉。「ローマンアイリッシュバス」という約2時間の入浴法で、岩盤浴からサウナへと徐々に体を温め、アイスサウナでクールダウン。体がだんだん解けていくような、「ととのう」とは異なる快感に溺れる。

特に気に入ったのは、オーシャンビューの天然温泉プール。洞窟のようなゲートを泳いで抜けるとプールが広がる。海と繋がっているよう。当然、おじさんもはしゃぐ。男女ともに水着で利用できるので、家族で楽しめるのが嬉しい。以上、1日目にして体が嬉々としていることがわかった。

〈唐津シーサイド ホテル東館〉
「仕上げの超絶景風呂。こりゃあたまんないよ!」

翌朝は佐賀市内の〈ONCRI〉へ。山間にある施設で、唐津とは正反対の山並みが続く。2000年以上の歴史がある温泉街で、湯はすべて38度ほどのぬる湯。ここでははじめての箱サウナ(箱蒸し風呂)を体験。まるで自分がおいしいベーコンになったよう。九州ならではの砂風呂も試すことができた。

〈古湯温泉ONCRI〉
「箱サウナ、こう見えて中は蒸されてます…」

次は〈ヌルヌル有田温泉〉。大衆的な施設だ。扉を開けると、看板猫のモモが出迎えてくれる。浴場には先客も。私の旅の楽しみは、地元の人との交流。おじさんが佐賀弁丸出しで話しかけてくる。聞き取れなかったが、一か八か相槌をしたところ、会話が成立。

みっちりサウナに入って、露天の冷鉱泉へ。広々の水風呂で、確かにヌルヌルして気持ちいい。これは癖になる。風呂を出てコーヒー牛乳を飲んでいると、また近寄ってくるモモ。手を伸ばしたが、通り過ぎていった。こちらは会話不成立。

〈ヌルヌル有田温泉〉

最後は鹿島の〈オクチル〉。知る人ぞ知る屋外のテントサウナらしい。人懐っこい笑顔のリュウジさんがお出迎え。早速サウナをいただこうとすると、なぜかリュウジさんも裸に。2人でテントの中へ。

聞けば、彼はもともと生まれ育った佐賀があまり好きではなかったようだ。ところがある時、恩師の助言で開眼。たくさんの人に地元の名水を体験してもらうのに、サウナを思いついたそう。と、話もそこそこに、薪ストーブ上の石へ地元の茶葉から煎じたお茶でロウリュ。

テント内に芳しい香りが広がる。いよいよ沢から引かれた天然水の水風呂へ。温度は10度以下。しかも飲めるという。あっという間に“あまみ”だらけの体に。甘くなったおじさんと言えば糖尿を思い浮かべるが、このあまみは格別だった。

〈オクチル〉

佐賀のサウナは想像を優に超えてきた。私も地元の山梨県が好きではない時期があったが「富士の天然水で水風呂、旬のフルーツで水分補給」も悪くないと考えた。ひょっとしたら、このサウナ旅で生まれて初めて人生を変えられたのかもしれない。

合間の佐賀グルメで、
「ととのい」を加速させる。

佐賀発祥の
大ボリュームちゃんぽん。

地元で愛されるドカ盛り野菜と中華麺は、淡泊な豚骨スープも手伝って箸がよく進む。サウナ前後の空腹時に。

〈井手ちゃんぽん本店〉ちゃんぽん
〈井手ちゃんぽん本店〉の特製ちゃんぽん。980円。

後造りまでおいしい、
踊るイカ。

呼子周辺に行くなら必食の「イカの活き造り」。ハサミで切って食べる。コリッとした食感で噛むほど甘く、余ったゲソの天ぷらがまた旨い。

〈大和〉いかの活き造り
〈大和〉のいかの活き造り。2,900円(定食)。

ゴマだれでツルリと食す
有田の豆腐。

にがりを使わず、葛やでんぷんを練って作る「ごどうふ」はプリンのように滑らかな舌触り。サウナ旅の道中にちょうどいい。有田焼の購入も。

〈ギャラリー有田〉有田名物ごどうふ定食
〈ギャラリー有田〉の有田名物ごどうふ定食。1,650円。

SPOT DATA

〈古湯温泉ONCRI〉

MODEL PLAN

1日目

13:30 長崎空港からレンタカーで〈井手ちゃんぽん本店〉に到着。特製ちゃんぽんで景気づけ。

15:00 〈御船山楽園ホテル らかんの湯〉で初サウナ。チームラボのインスタレーションも見る。

17:30 〈唐津シーサイドホテル東館〉にチェックイン。屋上のインフィニティプールで夕景を確認。

18:30 呼子の〈大和〉でイカの活き造りを。

19:30 〈唐津シーサイドホテル東館〉に戻って、
「ローマンアイリッシュバス」を心ゆくまで。

2日目

08:00 ホテルでフィットネスと朝ご飯。

10:30 〈ONCRI〉でぬる湯と朝サウナ。余裕があれば〈元祖吉野屋〉で土産を買う。

12:30 〈ギャラリー有田〉で軽めにごどうふランチ。

13:30 〈ヌルヌル有田温泉〉で地元の人とサウナ。休憩室の看板猫モモと仲良くなれるかトライ。

15:30 〈オクチル〉で締めのアウトドアサウナ。
オーナーのリュウジさんと人生を語らう。

18:00 軽食をつまみながら長崎空港へ。

佐賀県 地図

〈御船山楽園ホテル〉のある武雄市までは長崎空港から車で40分、佐賀空港から50分、福岡空港なら1時間程度。

佐賀県内をぐるっと巡るサウナ旅は、飛行機の本数も多い長崎空港を起点に、レンタカーで回るのが便利。