珠玉の昆虫美本8選。専門書店〈昆虫文献 六本脚〉が選書

『MEMORY OF DRAGONFLIES 蜻蛉の記憶』
著／加納一信

トンボの生態を知り尽くす男の40年の奇跡の記録。

トンボ写真家である著者が40年間追い続けたトンボとの千載一遇の記録。「日本蜻蛉学会に所属し、生態を熟知する加納さんだからこそ巡り合えた奇跡の瞬間を収めた写真集。素早いトンボの動きをブレなく捉え、飛翔、交尾、産卵など様々なアングルからの選りすぐりが収められ、驚きます。大田区のベニイトトンボなど、環境の変化により今では絶滅産地となった場所での在りし日の姿にも心動きます」。

『世界の美しい蛾』
編・著／岸田泰則

＃mothブームを裏づける美蛾のオールスター編。

インスタグラムで進行中の#mothブーム。「編・著者の岸田さんは日本蛾類学会会長で、蛾の啓蒙の第一人者。200を超える論文・報文を発表した岸田さんの膨大なコレクションから選り抜かれた逸品が集結。“蛾＝気持ち悪い”の先入観を覆す内容で、特にアフリカの蛾の美しさは特筆もの。慣れたら日本の渋い色の蛾の奥深さも知ってほしい」。

『驚異の標本箱 −昆虫−』
著／丸山宗利、吉田攻一郎、法師人響

最新技術で迫る、昆虫の機能美。

昆虫研究者の丸山宗利氏が工業デザイナーの吉田攻一郎氏、若手昆虫写真家の法師人響氏と組んだ奇跡の一冊。「一般人への虫の普及という点で丸山先生の考え抜いたコンセプトが詰まった集大成。高精細画像による超拡大写真で、毛一本で動きが変わるなど、昆虫に潜む機能美を解き明かし、すごいの一言」。

『ホウセキゾウムシEupholus属のモノグラフ』
著／Thierry Porion & Cedric Audibert

ホウセキゾウムシの鮮やかさがチェコの印刷の技で光る。

TAITAは1999年設立のチェコの昆虫専門の出版社。「ここは印刷の仕上がりが美しく、アート本の出版でも名高い。この本はホウセキゾウムシの図鑑です。表紙は上翅を拡大したもので、点描画の絵画のよう。ニューギニア島の詳細な分布図も掲載され、文献としても興味深い内容です」。

『つちはんみょう』
作・絵／舘野鴻

成虫までの空白を昆虫画で解き明かす。

著者は精密な昆虫画で知られ、同シリーズの『しでむし』『ぎふちょう』も名高い。「ツチハンミョウは長らく生態が不明でしたが、舘野さんが8年間観察し続けて、幼虫時に花に潜り、吸蜜に来たハナバチにつかまって巣に寄生するなど、成虫までの空白の期間を実証。よくぞここまでという根気と探求心がすごく、見る者を圧倒する密度の濃い画力で表現。感動します」。

『アフリカとマダガスカルのクワガタムシ図説』
著／Luca Bartolozzi & Karl Werner

アフリカのクワガタをすべて紹介。

丸いフォルムが愛らしいマルガタクワガタ属のコロフォンなど、アフリカ大陸とマダガスカル、その周辺島嶼の既知クワガタムシ科の各種を紹介した高品質なカラー図鑑。「本書の標本写真の半数以上とすべての生態写真は、当社の川井信矢が提供したもの。彼が1996年に発見した新種、Colophon kawaiiも掲載。すべての種が絶滅危惧種とされ、生態も謎が多く、その歴代の研究者の紹介ページも充実」。

『イモムシハンドブック』全3巻 +『イモムシの教科書』
著／安田守

図鑑の潮流を変えた影と実寸大。

イモムシの味のある表情をカバーに据え、身の回りにいる生き物であることを思い出させてくれる、ハンディな本。さなぎや成虫写真、食草の情報もあり、人気シリーズに。「本書の画期的なところは実寸大のイモムシの写真に影を入れて立体感を出したこと。従来の図鑑に比べ、生きている感が強く演出されています」。

『図説 世界の昆虫』全6巻
著／阪口浩平

いまだ色褪せない、これぞ昆虫図鑑の決定版！

著者は京都大学元教授でノミ類研究の権威。世界の昆虫にも造詣が深く、研究にあてた昆虫標本は5万点。1979年初版の本シリーズはヨーロッパ、アジアなどエリアごとに珍種、絶滅危惧種も取り上げる。「初心者から研究者を目指す人まですべての虫愛好家の決定版！

例えば南北アメリカ編では、『蝶と蛾の間にみられる巧みな擬態』など、変わった生態に関するコラムが並び、史料価値も高い。初版数が少ないため一時期全巻¥250000で取引された時代も。私は就職して貯金し手に入れました。古書店で見つけたら迷わず全巻購入を！」。