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旧東ドイツの農家の牛舎を住まいに変えて。アーティスト・Robert Abts

記憶を辿るコラージュなどを制作するケルン出身のビジュアルアーティスト、ロバート・アプツ。1907年に建てられた牛舎をリノベーションした、ドイツ・ブランデンブルクの住まいを訪ねます。

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photo: Rie Yamada / text: Yumiko Urae

牛舎の堅牢な構造を生かして自由な空間構成を実現

東西ドイツ分断の歴史はそれほど昔の出来事でもない。

この家の主人、ロバート・アプツの友人のアーティスト、ユタ・サトリはベルリンを囲むブランデンブルク州ブッフホルツの農家の生まれだったが、幼い頃に家族で旧西ベルリンに移住。社会主義時代にその農家は当局に没収され、国営農家の一環として使用されていた。

牛舎 外観
1907年に建てられた牛舎はもともと2つに仕切られていた。今は160㎡を住まいとアトリエ、80㎡を寒い間の冬の住まいとしている。夏はアーティスト・イン・レジデンスとして開放。

1989年にベルリンの壁が崩壊。彼女たちに再び、農家の所有権がすべて戻ってきた。ユタはその膨大な過疎化した敷地を、ベルリンを拠点としていたアーティスト仲間に開放。一部の牛舎と庭をロバートが購入した。

「すでに友人のアーティストたちがここに移住していたし、私はケルン郊外の出身で幼い頃は自然に近い環境で生活していたので、緑が多い住まいは理想的だったんだ。ベルリンもだんだんと生活費が高くなって住みづらくなってきたこともあり、母親と一緒に引っ越してくることに」

友人の建築家にお願いしたという、牛舎の構造を生かして施されたリノベーションとは……?