愛って、倫理を簡単に超える
「不誠実なもの」にとことん厳しい目が向けられる現代。うっかり不倫を肯定するようなことを言えばとたんにフルボッコである。そんな時代に本作はある男と妻と愛人の「奇妙な連帯感」を描いた。作家の白木は妻子ある身でありながら奔放に振る舞うモテ男。同じく作家の主人公・みはるは簡単に恋に落ちた。罪悪感なんてどこ吹く風、情熱的にお互いにハマっていく2人は「不倫ですがなにか」と言わんばかりだ。
一方で注目すべきは、広末涼子演じる貞淑な妻・笙子(しょうこ)。夫との関係を苦に自殺未遂した別の愛人の元に見舞いに行き、相手をなじることもなく勝ち誇ったそぶりを見せることもなく、花束と金を置いて静かに帰る。夫にみはるを紹介された時も「またか」というような表情を浮かべたが、それは悲しみでもあり哀れみでもあった。笙子は自分の夫を好きになる女たちの気持ちに寄り添ってしまい、どこまでも連帯してしまう人間なのである。
不倫が何年も続く中で、まるで共犯関係ともいうべき3人の絆は深まっていった。それは一般的には理解し難い愛の形だけれど。ラストシーンは、妻と愛人のとある共同作業が行われる。人によっては、特に世のサレ妻・シタ妻にとっては、グロテスクなシーンに映るかもしれない。しかし2人の表情は晴れやかだ。当人らにとっては尊くて愛しくて幸せな愛の作業なのであろう。そこに他者の共感や許しはいらない。本人たちが納得しているならそれでいいのである。