樫尾俊雄発明記念館(東京/成城学園前)

名品を生んだ発明家の閃(ひらめ)きの源
電卓からG‒SHOCKまで、世界的人気を誇るブランド〈カシオ〉。その生みの親をご存じだろうか。樫尾家の4兄弟の次男として生まれた俊雄は、部品の下請け加工をする兄の町工場で商品開発を開始。後に歴史的製品となる世界初の小型純電気式計算機や電卓、デジタル式腕時計、電子楽器を作り続け、生涯で313件の特許を取得した。細部にまでこだわった彼の私邸で、貴重な製品や資料、遺品を展示。「0から1を生み出す」発明家の小宇宙のような空間だ。
北里柴三郎記念館(熊本/小国町)

“近代日本医学の父”の軌跡
令和の新紙幣、千円札の肖像となったことが記憶にも新しい医学博士・北里柴三郎。医学校在学中に、医者の使命は病気を予防することであると考えた北里は、破傷風菌の純粋培養に成功し、血清療法を確立。「感染症学の巨星」といわれた彼の記念館には、少年時代を過ごした生家や、帰省の際の居宅、私財を投じて子供たちのために建設した図書館〈北里文庫〉が保存され、見学できる。伝染病と闘い続けた博士の歴史と功績を未来に伝え続けている。
練馬区立牧野記念庭園(東京/大泉学園)

植物を愛した博士の面影を見る
NHK朝の連続テレビ小説『らんまん』の主人公のモデルにもなった牧野富太郎が、晩年の約30年間を過ごし、「我が植物園」として愛した庭園が今も残る。敷地内の記念館では、牧野の遺品や資料を展示、書屋展示室では実際に使用していた書斎と書庫の一部を当時の様子に再現し、公開。スエコザサ、サクラ‘仙台屋’など、自ら植えた植物を含む300以上の種類が生育。晩年、自宅の庭で観察や採集、標本の整理をして過ごした博士の面影が感じられる場所だ。
中谷宇吉郎 雪の科学館(石川/加賀市)

“雪は天から送られた手紙”を体感
世界で初めて人工雪を作ることに成功した中谷宇吉郎の、雪の研究について学ぶことができる科学館。博士の研究や芸術活動、人となりについて知る展示はもちろん、冷凍庫の中で、ダイヤモンドダスト(氷晶)を再現する実演や、氷のペンダントを作る実験など、体験を通して雪の研究に触れることができる。「雪は天から送られた手紙である」との言葉を残した博士の、素朴に率直に自然と向き合う人柄と、彼が夢中になった雪の世界を堪能できる施設だ。
野口英世記念館(福島/猪苗代町)

誰もが知る世界的医学者の生家も
旧千円札の肖像である野口英世は、幼少期に受けた左手のやけどの手術に感銘を受け、医師を目指し、黄熱病の研究に尽力した。記念館では、彼の研究対象であった細菌の世界を学ぶことができるのはもちろん、研究室での一日を紹介するマンガや、母からの手紙、野口が描いた妻の肖像画などの展示も。さらに、国登録有形文化財の生家も公開しており、やけどを負った囲炉裏、医学の道に進む決意文を刻んだ床柱など、当時の生活を垣間見ることができる。
南方熊楠記念館(和歌山/白浜町)

博物学の巨星の偉業を辿る
明治時代の終わりに、神社合祀による生態系の破壊を訴えた南方熊楠は、環境保護の先駆者だ。研究は菌類学から天文学、民俗学など多岐にわたり、科学雑誌の最高峰といわれる『ネイチャー』の論文掲載数は51本を数える。南方が調査研究を行った地にあるこの記念館には、彼が遺した文献や標本類、遺品約800点を展示。彼の足跡を辿る貴重な資料として、昭和天皇、民俗学者・柳田國男、中国革命の父・孫文らの時代を象徴する人々との交流の記録も公開する。