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暦本純一×落合陽一 師弟対談 #4 AIが通訳すればSNSの炎上は減る?

AIの進化は私たちに何をもたらし、社会をどう変革していくのか。その答えを探るべく、日本の情報工学をリードする第一線の研究者で、師弟の間柄でもある暦本純一さんと落合陽一さんが「AI時代の知性」をテーマに語った2人の著書『2035年の人間の条件』。本書から、その一部を特別公開する全4回の短期集中連載。最終回は「人間同士の軋轢を解決してくれるAIの可能性」について。

photo: Yoshinori Kubo

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#4 AIが解決する社会問題

暦本純一

チャットGPTは言語そのものの在り方にも影響を与えるでしょう。かつて明治時代に言文一致運動で文語体から口語体にしたときに、二葉亭四迷(ふたばていしめい)や樋口一葉(ひぐちいちよう)などが新しい言語そのものを発明したんですよ。たとえば文末の「です」「ます」は、それまでの日本語では一般的ではなかった。AIとの対話でも、そういう言語の発明が起こるかもしれない。

落合陽一

なるほど。チャットGPT語というか、AI言語というか。

暦本

いまの日本語とは違う文体や語彙や文法を持つ新しいコミュニケーション言語。それで喋ったものを、AIが従来どおりの書き言葉に翻訳してくれる。

暦本純一
暦本純一。

落合

知能の局在化が起こると、「クラスターA」のほうはその新しいコミュニケーション言語を使って会話するようになるかもしれないですね。でも「クラスターB」はAIの自動翻訳でしかそれを使えないから、日常言語としてはそれを喋れなくなるだろうな、たぶん。だから、クラスターAの人間とクラスターBの人間がフィジカルに出会うと困るんですよ。

暦本

なるほど。クラスターAとクラスターBが話すときは、AIがあいだに入らないとコミュニケーションが成立しないんだね。

落合

面倒なことになりますよ。まあ、すでにいまの時点でも、僕はXで似たようなことをよく経験していますけど。

落合陽一
落合陽一。

暦本

140文字くらいでも、ちゃんと読める人間はじつはすごく少ないといいますよね。そもそも長い文章を文脈に沿って読み取るのは、人類の中でも限られた人しかできない。ただ140文字くらいだと、(16)ーワード・パターン・マッチング(1)で理解した気になっちゃう。でも誤解しているから、相手と同じような意見を持っているのに「そんなはずないだろ!」とネガティブなリプライを送ったりするんですよ。傍から見ていると、「2人とも同じことをいってるのに、なんでケンカしてるの?」と思うことがよくあるでしょ。要は早とちりなんだけれど、そういうコミュニケーションの断絶はありますね。

落合

インタープリター(通訳)がいないと、いくらでも起こりますよね。

暦本

だから、ケンカしているところにAIが入ってくれれば、炎上案件の多くは収まるんじゃないかな。AIが「この2人は同じことをいっています。みなさん仲良くしましょう」なんてあいだを取り持ってくれると、人類の軋轢(あつれき)がちょっと減るかもしれない。

落合

そうなると、フィジカルには同居できなくても、コミュニティは共有できますね。インターネットを含めたコミュニティなら、あいだにAIを介在させることで一緒に暮らせる。同じ部屋にいたら、軋轢ばかりでけっこう大変だろうけど。フィジカルなコミュニケーションもそれで成立するレベルまでユーザーインターフェースの進歩が加速する未来像は、あと15年では僕は描けないな。

ただ、いったんデータになったものを改変して出力することはできるから、「オンラインでは君と会いたいけれど、フィジカルではあまり会いたくない」みたいな関係性はどんどん出てくるかもしれませんね。

暦本純一と落合陽一

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