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ネオ大衆酒場案内。令和生まれの大衆酒場はキャラが濃いめ?

ちょいと一杯のつもりで飲んで……のはずが、ついつい杯を重ねてしまっても、懐に優しい大衆酒場なら安心。魅力ある酒とつまみと雰囲気が愛されている、新旧大衆酒場をはしご酒。

photo: Hisashi Okamoto / text: Haruka Koishihara

2010年代後半から、大衆酒場はちょっとしたブームだ。シニア男性のオアシス的なイメージの強かった歴史ある名店にも、女性や若い世代が臆せず飲みに行くように。やがて、昭和から脈々と続く酒場にインスパイアされつつ、今っぽさをミックスした「ネオ大衆酒場」がトレンドに。まずは、そんな令和生まれの大衆酒場を巡ろう。

ジャンソーアタル(北千住)

カオスな雰囲気の中、ひねりの
利いたつまみと酒に酔う

そこに昭和の調度品が不思議と調和し、混沌とした雰囲気が漂う。料理は、酒場の定番的なメニューでも中華やエスニックのエッセンスを加えてひとひねり。そしてドリンクも、自家製の漬け込み酒やオリジナルカクテルなど“ここならでは”な品揃え。夜が深まれば、ひそやかなムードも濃密に。

北千住の飲み屋横丁にある〈ジャンソーアタル〉は、その名の通り古い雀荘に大胆に手を加え2021年にオープンした酒場。同じ北千住にある〈酒呑倶楽部アタル〉〈タチアタル〉の姉妹店にあたる。中の様子がまったく窺い知れない隠れ家酒場は〈麻雀 登美〉という雀荘時代の屋号が目印だ。無機質なステンレスカウンターや麻雀牌を模した店名のネオンサインは極めて今様。

北千住〈ジャンソーアタル〉店内
雀卓を改造したテーブルは特注。

大衆酒場 ネオトーキョー(三軒茶屋)

楽しく、おいしく、映える!
令和的な要素が詰まった人気店

一方、〈大衆酒場 ネオトーキョー〉は、衒(てら)いなく“ネオ”な酒場を標榜する。プロスケートボーダー、ミュージシャン、アパレル業を経て飲食店を開いたオーナーはカルチャーシーンにも強く、空間にもそれが生かされている。
フードにはイタリアンやスパニッシュなどのテイストを自在にミックス。酒もまた、ナチュラルワインもあればサワーもホッピーも、といった具合で、そのフリーダムな空気感に惹かれる客で、駅からはやや離れているにもかかわらず毎晩のように満員御礼!

大衆食堂スタンド そのだ 五反田店(五反田)

食事も酒も! な、東京における
“スタンド”系ブームの火つけ役

“大衆”つながり、といえば〈大衆食堂スタンドそのだ〉も忘れちゃいけない。タイル張りのコの字カウンターや、壁に貼られた手書きの短冊メニューなどには、昭和に生まれ、今や文化遺産的存在になりつつある大衆食堂へのオマージュが込められている。

気の利いたつまみとしっかりした食事と酒とを終日楽しめるが、盛り上がるのはやはり日没後。店の前にできる行列は、今や五反田の夜の風物詩。大きな暖簾の内側は、店内と店外で差し向かいに座れるカウンターなのだが、夜風に吹かれて飲める、この外席が心地よい。

タイ屋台999 下北沢店(下北沢)

バンコクの屋台で出会った
名物メニューが一堂に

店外に座るカウンター席がいい感じなのは〈タイ屋台999(カオカオカオ)〉も同様。井の頭線高架下の商業施設〈ミカン下北〉内にあるが、通路に面したカウンターはナイトマーケットを彷彿とさせる。バンコクの屋台300軒以上を食べ歩いて選んだ料理を再現しているというフードもしかりだ。カラフルな看板や、食品サンプルが並ぶキッチュなショーケースがいい味を出している。

新日の基(有楽町)

昭和も平成も令和も、
大衆酒場は夜の止まり木

高架下の酒場といえば、JR有楽町駅の〈新日(しんひ)の基〉は昭和生まれの大先輩。正確な創業年は不明だそうだが優に70年を超えている。もともとは引き揚げ者の宿泊所だった穴蔵のような空間は趣があるし、100種類以上はあるつまみは、どれも都心部らしからぬ良心的な価格。特に新鮮な魚介類はお値打ちもの!

界隈きっての大衆居酒屋として長く愛されている。現在は、創業者の孫娘と結婚したイギリス人のアンディさんが3代目として店を取り仕切り、令和の客層はグローバルに。

徳田商店 有楽町店(有楽町)

大阪の角打ちそのままの味と
雰囲気を東京のど真ん中で

同じ有楽町の駅チカながら、線路を挟んで反対側に22年7月に登場したのが〈徳田酒店〉。ニューフェイスでありながら、店構えといい品書きといい、古典酒場的な風情が漂う。ここは、明治23(1890)年に大阪で創業した酒販店〈徳田商店〉が手がける居酒屋。

2010年に大阪・京橋に1号店を開くや評判を呼び、今では大阪で12店舗を数えるまでに。平成に生まれ、令和に東京上陸を果たした “西からの刺客”なのだ。食い倒れの街で鍛えられた料理と酒、気取らない雰囲気、さらには懐に優しい値付けが嬉しい限り。

香福味坊(秋葉原)

朝から夜明けまでフル稼働!
〈味坊〉が手がける大バコ酒場

さて、令和の大衆酒場案内、大トリを飾るのは秋葉原の駅チカビルの地下に登場した〈香福味坊〉。100席超の大バコなのも驚きなら、朝の7時から早朝5時までノンストップ営業なのも話題。神田〈味坊〉を皮切りに、中国地方料理の店を次々に開く〈味坊集団〉の最新店だけに、各店自慢の味が揃い料理も酒も充実の一言だ。
旨くて安くて個性ある、令和の大衆酒場。明日はどこの暖簾をくぐろうか。