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食べる

季節を感じ、願いを込めて食べたい「あんこ歳時記 」。6月、7月のあんこ

雛祭りには草餅、彼岸にはぼた餅、端午の節句には柏餅……。日本には、一年を通して、無病息災や健康長寿を願うたくさんの行事があり、あんこ菓子はそうした行事や季節と密接につながっている。そもそもあんこの材料、小豆は、赤い色が邪気を祓うとされ、古くから縁起が良いとされてきた食べ物。さらに、意匠や用いる材料などにも由来や意味があり、そこには先人の願いが込められている。歴史や由来を知って口にすれば、いつものあんこ菓子がもう一つ、味わい深いものになるはず。

Iillustration: Yumi Uchida / Text: Yuko Saito

6月/水無月

小豆がのった三角の菓子で、
半年分の穢れを祓い、
残りの半年を健やかに。

晦日は、半年分の心身の穢れを祓う神事、夏越の祓。この時期に菓子屋に並ぶのが、小豆がのった三角形の水無月だ。この月の1日には、氷室の氷を献上する祝事が行われており、水無月の形は、夏越の祓の時に使われる御幣の先の形であるとも、この祭りで献上していた氷の形ともいわれる。いずれにせよ、今の形になったのは、近代以降のこと。また、金沢では、旧暦6月1日の氷室の祭りに由来する、氷室饅頭を7月1日に食べる習慣がある。

水無月
夏越の祓〈水無月〉

ういろう地に、邪気を祓うとされる小豆を敷き詰めた三角形の菓子。近代以降京都の菓子屋が考案したといわれており、主に京都で食べられていたが、徐々に広まっている。
氷室饅頭
氷室の日〈氷室饅頭〉

氷室の日にちなんで、金沢で続く縁起菓子。こしあん入りの酒饅頭で、白、赤、緑の3色で作られる。色の意味は諸説あり、一般的には、白は清浄、赤は厄除け、緑は健康を表すとされる。

7月/文月

夏到来。暑い季節は、
小豆の餅で精をつけ、
涼やかな錦玉羹で暑気払い。

土用の丑の日にウナギを食べることと同じ。季節の変わり目に、精のつくものを食べる風習は古くからあり、土用の入りに食べる土用餅もその一つ。滋養のある小豆を使った餅を食べれば、暑い夏でも根気が続くとされた。また、この時期、菓子屋は寒天を使った、透明で喉越しのいい錦玉羹(琥珀)や葛の菓子を作り、涼やかさを誘う。

土用餅
夏の土用〈土用餅〉

お餅を小豆のあんこで包んだ、いわゆるあんころ餅。形は丸形、しずく形とさまざま。周りのあんこも、こしあん、つぶあん、黒糖あんと、いろいろだが、中は、あくまで力がつく餅だ。
錦玉羹
暑気払い〈錦玉羹〉

江戸時代から続く、寒天を砂糖、水飴などと固めたお菓子で、琥珀とも。これは、夏の季語である金魚が、水面に浮かぶ青葉の陰を泳ぐさまを表した〈とらや〉の若葉蔭。金魚は練り切り製。