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プリン・ア・ラ・モードを食べに。東京の5軒

プリン・ア・ラ・モードをあちこちで見かけるようになった。ホテルのコーヒーラウンジから、町場のカフェまで。クラシックに進化系と、スタイルいろいろ、百花繚乱。プリン・ア・ラ・モードの今がわかる5軒を紹介しよう。

photo: Kenya Abe / text: Kei Sasaki

カスタードプリンに、フルーツやアイスクリームなどをデコレーションしたプリン・ア・ラ・モード。「ア・ラ・モード(à la mode)」は、フランス語で「流行の、現代的な」という意味。アメリカでは19世紀末には「アイスクリームを添えた」という意味で使われていた。

現代のプリン・ア・ラ・モードが日本生まれのデザートというのは有名な話。第二次世界大戦終結後、7年間GHQに接収されていた横浜〈ホテルニューグランド〉で、アメリカ人将校の妻たちを喜ばせようと、当時のパティシエが工夫を凝らして考案した。アイスクリームやアメリカ製のフルーツの缶詰などを使い、ボリュームもたっぷり。

デザート皿では大きさが足りず、代わりに使用されたのが、楕円形で脚が付いたコルトンディッシュと呼ばれる前菜用のガラス食器だが、今や「プリン・ア・ラ・モードグラス」の名で製造・販売されているのも興味深い。
目新しさ、ゴージャスさは憧憬の的となり、食生活の欧米化が進む戦後の日本で、ハレの日のデザートとして瞬く間にポピュラーになった。そのプリン・ア・ラ・モードが、今、再び”流行”しつつある。

背景として、喫茶店やフルーツパーラーでプリン・ア・ラ・モードを食べて育った世代が、店主やパティシエとして活躍するようになり、復刻を手がけていることが大きい。加えて1990年代以降、プリンの新しいスタンダードになった滑らかタイプに代わり、卵、牛乳、砂糖で焼く昔ながらの硬いプリンが再び人気を集めていることや、パフェのブームも流れを後押ししたはずだ。

クラシックの復刻、スタイリッシュなグラススイーツ仕立てに、重箱型やアイスクリームを使わない個性派まで自由自在。上質なフルーツやクリームを贅沢に取り入れ、味わいも洗練させながら、令和の「ア・ラ・モード」を生み出している。

コーヒーパーラー ヒルトップ(御茶ノ水)


空間同様、クラシックに。

コーヒーパーラー ヒルトップのプリンアラモード
復刻デザート「山の上ホテルの プリンアラモード」クロスやプレートもエレガント。フルーツは、柿やブドウなど季節替わりのものを含む6〜7種類。¥1,430。

スワンシューがアクセントの絢爛な盛り付け。

2019年12月にリニューアルオープンした〈山の上ホテル〉。昭和の文豪たちが安らぎを求めた古き良き佇まいはそのまま、建物が元来持つアールデコ調の意匠を、新しい時代に向け再生させた形だ。

リニューアルに合わせ〈コーヒーパーラー ヒルトップ〉のメニューにプリン・ア・ラ・モードが登場。スワンシューにリンゴのエヴァンタイユ(扇)と、ホテルの雰囲気同様、クラシックスタイルで勝負する。「クラシックであっても、古くさくてはいけない。現代の味覚に合ったものでないと」と、安﨑正平ペストリーシェフ。

コーヒーパーラー ヒルトップのスワンシュー盛り付け
スワンシューの白鳥は、提供直前に切って生クリームを詰めて組み立て、仕上げに粉糖をかけて美しく完成させる。



コーヒーパーラー ヒルトップのプリンアラモード盛り付け
複数の素材で作る繊細な盛り付けを安定させるため、器に3ヵ所、土台となる生クリームを絞った上に盛り付けていく。

主役のプリンは、全卵、牛乳、砂糖というベーシックな配合に、卵黄と生クリームを加えてコクと滑らかさをプラスし、食べ応えのある硬さに焼き上げる。しっかり焦がしたカラメルソースのほろ苦さもアクセントに。スペイン製の陶器のシャンデリアや、ホテルを愛した池波正太郎の絵画が彩る優雅な空間で味わうにふさわしい一皿だ。

Åre(渋谷)


バニラの香りをカラメルにも。

Åreのプリンアラモード
「プリンアラモード」主役はプリンとフルーツで、生クリームはプリンの上に絞るだけ。フルーツは、バナナがマスト。¥980。

喫茶店インスパイア、銀色の器がノスタルジック。

渋谷の繁盛ビストロ〈cuisine et vin aruru〉やベトナム料理〈ヨヨナム〉系列のカフェ。オーナーのヤマモトタロヲさんは、名古屋の出身。

故郷の喫茶文化へのオマージュとして、あんバターホットケーキやクリームソーダなどの懐かしい味をメニューに揃える。プリン・ア・ラ・モードも、その一品。「器はステンレスのオーバル形で、飾りのチェリーはあえて缶詰でないと」と、徹底して“昔ながら”の形を貫く。

プリンも、生クリームは加えず、卵、牛乳、砂糖だけを使い硬めに焼くクラシックスタイルだが、生地だけでなくカラメルにも、しっかりとバニラビーンズを効かせ、香りと味わいはリッチに仕上げる。ハロウィンにはカボチャ味、バレンタインにはチョコレート味と、季節限定のフレーバーも定着し、今やすっかり店の顔だ。

ETUDE MONZ CAFE(戸越銀座)


カラフルさ際立つグラス仕立て。

ETUDE MONZ CAFEのプリンアラモード
「プリンアラモード」カラフルなフルーツが層を成す。メープルシロップでキャラメリゼしたナッツとレモネードのシロップが隠し味。¥730。

食感、甘苦さが相乗するグラススイーツ型。

門前仲町の〈MONZ CAFE〉が、同店を一躍有名にしたシグニチャーのプリンアラモードを引っ提げ2020年8月、戸越銀座に2号店をオープン。

門前仲町でプリン・ア・ラ・モードを提供し始めたのは2018年。これまでになかったグラススイーツ型で、その新しい可能性を示した先駆店だ。
大きめのダイス状にカットされたフルーツは、ジューシーで食べ応え十分。
クラシックスタイルの中でも卵の配合をより多めにし、かっちりと焼き上げたプリンの食感ともバランスがいい。

しっかり焦がしたカラメルに加え、ローストしてキャラメリゼしたナッツ類でビタースイートなアクセントをプラス。店が推すニュージーランド発のロースター〈オールプレス・エスプレッソ〉の豆でれるコーヒーやエスプレッソドリンクとの相性も文句ナシだ。

Café Lisette(二子玉川)


旬のフルーツを1種類だけ!

Café Lisetteのプリンアラモード
「プリン・ア・ラ・モード」プリンを生クリームがぐるりと囲み、その上にフルーツが並ぶ。手前はイチゴ、奥はキンカン。各¥1,030。

フルーツの旬をプリン・ア・ラ・モードで味わう。

12月から春先にかけてはイチゴ、続いてアメリカンチェリーにブルーベリー……と、フルーツの年間のラインナップは約10種類にも上るが、常時一皿に使用するのは旬の1種類のみ。
プリン、フルーツ、生クリームのみの潔い仕立てで、季節感をダイレクトに楽しませてくれる。

一口ごとに3点がバランス良く食べられる盛り付けで、やや硬めながら、口溶けは滑らかなプリンの食感まで、シンプルだが計算し尽くされた味だ。オーガニックコットンやリネンで作られるウェアブランド併設のカフェとして、15年前にオープンした〈Café Lisette〉。

2017年に登場したプリン・ア・ラ・モードは“全制覇”を目指すファンが続出する人気メニュー。放射状の盛り付けもグッドデザインで、ブロカントが配されたセンスの良い空間にぴったりとハマる。

和光アネックス ティーサロン(銀座)


層を味わうパフェスタイル。

和光アネックス ティーサロンのプリンアラモード
「銀座 プリン・ア・ラ・モード」硬いプリンはバニラエッセンスで、滑らかプリンはさやごとペーストにしたバニラで香りづけ。¥2,200。

カスタードの味のグラデーションを楽しむ。

〈和光アネックス〉2階のティーサロンで、2020年10月からメニューに加わった「銀座 プリン・ア・ラ・モード」。昔懐かしいデザートを、現代のセンスで再構築。

硬めのカスタードプリンの下に、バニラの風味が豊かな滑らかプリンを忍ばせ、間にもカスタードクリームをサンド。カスタードの異なる食感と味わいを楽しみ尽くせる。

デザートの看板メニューともいえるパフェに倣い、パフェグラスで提供。折り重なる層の美しさを目でも楽しめ、複数の味を一匙で口に運べるよう計算されたモダンスタイルだ。一方で、フルーツは昔ながらのバナナやリンゴもあしらい、親しみの持てるルックスに。

クラシックとモードの絶妙なバランス感覚や、アーモンドチュイルなどの食感の効かせ方に、パティシエの技を見る一品だ。