Drink

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飲む

あまたの飲食店主へとつなぐ、地方都市のハブとして。大阪〈ワインショップ フジマル〉

飲み手としては、飲食店で注いでくれる人がなんといっても目立つ存在。でも直接の接点はなくても彼ら彼女らの後ろには、必ず頼りにしている酒販店がいる。インポーターからボトルを選び、受け取り、吟味し熟成させて、これぞという相手へ卸し、魅力を伝える。彼ら酒販店主もまた、ワインの流れに欠かせない存在なのです。

photo: Yoshiko Watanabe, Kenya Abe, Yoshitaka Morisawa, Koji Maeda / text: Mako Yamato, Kei Sasaki, Tsutomu Isayama

深く長く付き合う。ワインとも、人とも

「東京でウチを知った人の中には、大阪の店と知らない人もいる」と藤丸さんが笑うほど、もはや知名度は全国区。ショップからレストラン、ブドウ栽培に醸造、コンサルなど、輸入以外のワインに関するほぼすべてのことに携わりながらも、あくまでも本業は業務卸だ。

大阪の下町にある業務用セラーには3万本をストックし、「1日に1,000本入ってきて、1,000本すぐ出ていく感じ」という勢いで、ワインを取引先の飲食店たちへ届ける。「飲食店はたった一晩のお客さんの一瞬のために力を注ぐ。正解のないものに一生懸命やる人を愛しているし、バックアップしたい」との思いは強い。

方向性を決めるきっかけは現・京都〈ル・キャトーズィエム〉店主、茂野眞さんがくれた。「学生時代、同じバイト先だった彼がフランスへ料理修業に。やがて2002年、たった1種類だけワインを担いで戻ってきた。それがジェラール・シュレールのエデルツヴィッカー。飲んだ瞬間、アルザスの風景がぱっと浮かんだんですよ。行ったこともないのに(笑)」

左/木谷ワイン、右/ジェラール・シュレール
左/奈良で2018年にスタートした、木谷ワイン。「日本ワインにも多く関わっていますが、今注目しているのはここ。自分たちが大阪でやってる畑とは地続きで地質も似ている。ようやく仲間ができた、という気持ち」。右/ジェラール・シュレール。「きっかけになった造り手といえば、やっぱりこれ。後に茂野さんと一緒に訪ねました」

やがて興味はワイン造りへ。2003年、学ぶために選んだ先はオセアニアだった。「帰国後、いつかワイナリーをやることを目標に酒販店を立ち上げたんですが、高校時代からの仲間2人を誘い会社にしたら、もう本業はここだと腹をくくりました」。2人とは、今も一緒の中村賢一郎さんと福井英太さん。

売れない頃から卸してくれた〈ヴィナイオータ〉の太田久人さんとの家族ぐるみの付き合いも20年を超えた。あえて輸入に手を出さないのは、彼らインポーターに育ててもらった感謝の思いと同時に、セレクトが要、というショップの矜持ゆえ。

「一番旨いワインは存在しません。飲み手の好みに合う一本をつなぐのが自分たちの役割」。フジマルほど多彩な領域に展開するショップもなかなかない。しかし手を広げても、そこはずっとブレない軸足であり続ける。

<ワインショップ フジマル>店主の藤丸智史