斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」第47回 The Libertines『Up The Bracket』

声優・斉藤壮馬が、10代のころに耽溺していたカルチャーについて偏愛的に語ります。

photo: Kenta Aminaka / hair&make: Shizuka Kimoto / text: Soma Saito

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The Libertines『Up The Bracket』

The Libertines『Up The Bracket』のCDを持つ斉藤壮馬

好きな音楽家・バンドは枚挙にいとまがないが、中でも彼らにはとりわけ影響を受けている。

The Libertines『Up The Bracket』——ザ・リバティーンズ『リバティーンズ宣言』。今回は彼らと、このアルバムについて語りたい。

ロックンロール・リバイバルを代表するバンドはどのバンドか?そう問われると、いくつかのバンドが思い浮かぶ。

たとえば、The White Stripes。

ジャック・ホワイトとメグ・ホワイトからなるこの2ピースバンドは、世界的ヒット曲「Seven Nation Army」(アルバム『Elephant』所収)などで知られるアメリカ初のモンスターバンドだ。

アメリカのバンドでいえば、The Strokesも外すことはできない。

フロントマンのジュリアン・カサブランカスらによる5ピースバンドの1stアルバム『Is This It』(2001)は、そのシンプルでソリッドな音像から、ロックンロール・リバイバルの幕開けを飾る作品となった。

斉藤壮馬のポートレート

そんな彼らと時を同じくして、ロックンロールの本場・イギリスから登場したのが、ザ・リバティーンズである。

2人の圧倒的ソングライター、ピート・ドハーティとカール・バラーを中心に、性急なパンクサウンドにのせてシニカルで物語性の強い歌詞を痙攣気味なヴォーカルで歌い放つ彼らの音楽は、あらゆる世代のロックファンを虜にした。

ロックキッズだったぼくもそんな中の一人だったが、なぜだろう、どうやってアルバム『Up The Bracket』を手にしたかよく覚えていない。

雑誌で見たのか、店舗で偶然見かけたのか——どちらにせよ、気がついたらぼくはこのアルバムを毎日、それこそどうかしてしまったんじゃないか、というくらい聴きまくっていた。

当時CDに入っていたライナーノーツや対訳も読み込み、歌詞カードに書いてあるコードを弾いて悶絶したりと、とにかくはまっていた。

まずM1「Vertigo」からして最高である。

まさしく「めまい」のするような前のめりなビートにスカスカの歌とギター。コーラスワークも絶妙にディスコード。けれどそれがたまらなくクセになるのだ。

そして続く「Death on the Stairs」。このアルバムの中でもっとも好きな曲だ。

どんなところが好きなのか、ある程度は言語化できるのだが、なぜ好きなのかと問われると、ちょっとよくわからない。

まず冒頭の、単に3つのコードを小さく弾いただけのイントロに心奪われ、何度もコピーした。そこからのヘロヘロだが絶妙な跳ね感のある本イントロがもう優勝である。

ソングライターであるピートとカールの共作による歌詞も好きで、特に、

So, baby, please kill me
Oh, baby, don't kill me

の部分がいっとう大好きだ。とてもシンプルでありながら、いろいろな感情がおのれの中で渦巻き、爆発しそうだった中学生の自分のことだ!と感動すら覚えた記憶がある。

ピートとカールという、タイプの違う魅力的なフロントマンの存在にも憧れた。結局ぼくはツインボーカルのバンドを組むことはなかったが、いつかそんな機会があるかも……といまだに夢見たりしている。

彼ら2人はその後袂を分かち、別々のバンドを組むことになる。

Baby Shambles(ピート)とDirty Pretty Things(カール)である。

そのどちらにもこれまた影響を受けているのだが、語るのはまた別の機会に譲るとしよう。

とにもかくにも、ザ・リバティーンズはぼくにとって、勝手ながら、あのころの青春を共に駆けていたバンドなのだ。

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