混乱するロシアで、写真による対話を。命懸けで作品制作に取り組むクリスティーナ・ロシュコワ

路上で抱き合うカップル。部屋の中で寄り添う少女たち。社会が混乱するロシアで、マイノリティが置かれた立場や人々の痛みと向き合うアーティストがクリスティーナ・ロシュコワだ。政治犯として投獄された経験もありながら臆せず写真作品を発表する。写真集『unbewitched/アンビウィッチド』の発表を記念して東京で開催された展覧会の会場で、彼女が見るロシアのリアル、表現活動に見出す希望を聞いた。

photo: Kazuharu Igarashi / interview: Yuka Takahashi (Hi Bridge Books) / text: BRUTUS

命懸けで作品制作に取り組むロシア人アーティストに聞く

──日本での展示はオーディエンスからどのような反応を受けましたか。

今回のような写真集の発表や展示は今のロシアでは不可能です。ウクライナ侵攻以来、検閲もどんどん厳しくなっていて、こういった写真集は印刷所で印刷することすらできません。

日本でトークイベントにたくさんの方が来てくださったり、その後もインスタでメッセージをくれたりすることは、私にとってはすごく価値があります。というのも、ロシアでは日本の文化はカルト的な人気があって、日本で評価されることは芸術家として大きな意味を持つんです。

私自身も日本の文化が好きで、文学だと三島由紀夫や安部公房、浮世絵や春画にも興味があります。日本映画も本当にたくさん観ました。大島渚『愛のコリーダ』、増村保造『赤い天使』、若松孝二『ゆけゆけ二度目の処女』、押井守『天使のたまご』、中平康『月曜日のユカ』、小林正樹『怪談』、新藤兼人『藪の中の黒猫』、黒澤明、溝口健二、勅使河原宏……。日本に限らず、映画全般に大きな関心があります。

──「Brides(花嫁)」という作品はどのように制作されましたか。

2000年代のファッションが好きで、そのウェディングドレスを着せた写真を撮りたいと考えました。場所もいろいろ試したのですが、このゴミ捨て場が一番よかった。

でも、ロシアでは13年に最初に制定された「同性愛宣伝禁止法」という法律があります。なので、真昼間に路上で2人の女の子が抱き合っているだけでも告発の対象になる可能性がある。非常にスリリングな制作でした。

──5年間のキャリアの中で、視点が大きく変わったように感じました。

初期の頃は即興的な制作でしたが、新しいプロジェクトではより深いリサーチを行っています。私はただ美しい写真を撮りたいわけではありませんし、自分のことを写真家ではなくアーティストと捉えています。

──私もあなたは写真家ではなくアーティストとして表現していると感じたのでその言葉が聞けてつながりました。

ロシアでは写真集は「カタログ」と呼ばれてしまったりする。ギャラリーでも、コレクターたちと酒を飲んでいるばかりの、まるでソ連時代に生きているかのような画家たちの作品が評価されていて、若い女性が撮る写真はなかなか価値を認められないんです。私は芸術について、ジャンルで分けて考えていません。メディアにかかわらず、いかに観客と対話ができるかが一番大切なんです。

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