大学には壁がある
私は2019年に文学部美学芸術学部専修課程を卒業した東京大学の卒業生です。ミュージシャンになりたくて3年生と4年生の間に休学して宅録をしていましたが、特に何もできず、復学後は音楽ライターになりたいと思い様々な出版社の入社試験を受け、その流れで今に至ります。卒業論文のタイトルは『日本のポピュラー音楽における「都会的」という感性 「シティ・ポップ」の分析を中心に』というものでした。
学生時代から現在まで、自分の行動原理は知的好奇心が刺激されるかどうかということで一貫していて、東京大学×BRUTUSというちょっと不思議な組み合わせの接点もそこにあると考えています。
私は毎年の初めに『山下達郎のサンデー・ソングブック』で放送される山下達郎さん×宮治淳一さんのマニアックすぎる「新春放談」が大好きです。それは、いい音が鳴るレコードが目の前にあればそれでいいという、趣味人の自律的な時間が流れていて安心できるからなのですが、今回取材した東大の様々な研究室にも、それと同じ時間が流れていました。
大学の周りには、壁がある。その壁が、大学人たちの時間を守っている。一方で大学の壁は、それを乗り越えて知りたいと望む人にはとても寛容で、敷居を下げて、めくるめく学問の世界に案内してくれる。今回の特集のタイトルが「入学案内」なのは、そういう理由です。
知的好奇心を持ったすべての人々に、東京大学は門戸を開いています。学びたいと思った瞬間、あなたは大学という知的空間の中に入ることができるのです。学ぶことの価値が揺らぐ今の時代、心のよりどころになるような知性を自分の中に育む一助に、この本がなればと思います。
