伴奏珈琲店(北野白梅町)
町に寄り添う“普通”の喫茶店で、コーヒーと音の隙間を味わう
2025年9月に二条から北野天満宮近くの商店街に移転したばかり。もともと喫茶店だった物件をほぼそのまま居抜きで営業している。店主の坂東辰郎さんいわく、目指すのは「古い町の生活の中に溶け込んでいるような、近所の方が通う、昔ながらの“普通”の喫茶店」。
基本メニューは自家焙煎のオリジナルブレンドで、ネルドリップで淹(い)れるコーヒー。その“伴奏”となるべく、空間を演出するBGMはジャズやピアノ作品のレコードだ。「喫茶店に音楽は、時間や空間に寄り添うもので切り離せない」と話す坂東さん。
「音の隙間を聴くような、余白を大切に」が信条。のんびりとした町の生活のムードを受け継ぐ喫茶店で、京都時間をまったり過ごしたい。
遠藤珈琲店(一乗寺)
喫茶文化が残る京都で、深煎りの“美しい時間”
一乗寺の住宅街にある元・法律事務所の建物で2025年8月から営業を開始した〈遠藤珈琲店〉。店主は、大手コーヒーチェーンや個人の喫茶店で勤務経験がある、鳥取出身の遠藤聡さん。昔ながらの喫茶文化が残る京都の土壌に惚れ込み、移住したそうだ。
手回し焙煎機を使い、ネルドリップで丁寧に淹れられるのは深煎り。芳醇なテイストはもちろん、「ゆっくり味わう深煎りにしか生み出せない美しい時間がある」と遠藤さん。
BGMは70年代のロックやシンガーソングライターのレコードが中心だが、簡単に再生できる配信ではなく、コーヒーと同じで「手をかけるからこそ得られるものがある」と考えている。落ち着いた佇まいは早くも町に馴染んでいる。
HOWENE(北白川)
北白川のミニマルな空間でワイン×レコードの優雅な時間
白川通沿いにある大きなガラスの扉が特徴的なワインバー。店主の江頭諒さんはカリフォルニアへの留学時にコーヒーに目覚め、飲食の道に。帰国後は東京〈パドラーズコーヒー〉等に勤務する中でナチュラルワインの、体の隅々に染み渡る感覚に開眼。そして京都へ移住し開業。
BGMはレコードで、配線はフロアに埋め込む凝りようだが、ミュージックバーにあらず。江頭さんいわく「あくまで音楽は空間の体験をさりげなくアシストするもの。それにお客さんたちをつなぐもの」だ。フュージョン、R&B、ロックなどがミニマルな空間で軽やかに響く体験はここならでは。通りを過ぎる車を横目に早い時間からグラスを傾けて、優雅な時間に浸るべし。
しばし(岡崎)
漢方茶で音に向き合う、畳敷きのリスニングサロン
平安神宮から歩いて5分ほど。築100年以上の京町家を改装した、まるで和のリスニングサロンだ。オーナーはアンビエントをテーマとした展覧会『AMBIENT KYOTO』の主催者でもある中村周市さん。
畳に鎮座する英国製のスピーカーや真空管アンプはすべて中村さんの私物で、ジャズ、アンビエント、それにビートルズまで、古今東西の音が静かに流れる。中村さんいわく、音楽以外は「あえて色をつけたくない」空間。つまり余計なものがないスペースで、庭の季節の移ろいを眺めつつ、漢方茶を飲み、静かに音に向き合う。
音を聴く耳がリセットされるような、そんな時空間は京都の新風景だ。定期的にコンサートや落語会等のイベントも開催している。
深夜喫茶/ホール 多聞(三条)
三条木屋町の地下に80席。時間感覚がなくなる深夜喫茶
繁華街のど真ん中、三条木屋町の地下には、巨大な深夜喫茶がある。席数は80、まるで都市のエアポケットとも言える〈多聞〉は、店名の通り、コーヒーだけでなく音を味わう喫茶空間をコンセプトとしている。BGMの基本はジャズだが「ゆったりできる音楽を」とオーナーの西條豪さん。
そして一人で静かに本も読めるけれど、レコードの音だけでなく、話し声、豆を挽く音など、いろんな人たちのいろんな音に接する場にしたいと考えている。薄明かりのちょっと妖しいムードの中に腰を据えれば、時間の感覚がなくなる。
店内には書籍が並ぶ図書室があり、加えて店の奥にはアップライトピアノを備え、時折音楽ライブも催している。
古今(三条)
祇園の路地の隠れ家で、音楽とブレックファスト
〈古今〉は骨董品店が立ち並ぶ通りとして知られる、古門前通の細い路地にある小さな音楽処。「祇園で朝からコーヒーがゆっくり飲める場を作りたくて」と話すのは店主の齊藤美也子さんだ。
通常のバーを、レコード愛好家の夫、悟さんと共に2025年9月からモーニング営業も行うレコードバーに新装開店。祇園の古い町家を和モダンなテイストで改装した店内に飾られたレコードは竹内まりや「PLASTIC LOVE」の12インチなど。
シティポップやブラックミュージックを軸とした選曲が朝から楽しめる。歴史ある町で「昔と今のカルチャーを融合させていきたい」と齊藤さん。祇園で音楽とブレックファスト、そんな穴場はここだけかもしれない。











