私が好きな冒険の本と映像。スタイリスト・金子夏子

五感を解き放つ大自然へ、たった一人で孤独と向き合う旅へ、世界の裏側にあるリアルを求めて……。人はなぜ、冒険に惹かれるのか。その答えを求めて、冒険好きの金子夏子さんに、一番好きな冒険作品を教えてもらいました。観るだけで、読むだけで、心沸き立つ作品。あなたの常識を覆してくれる冒険作品がここに!

illustration: Ryo Ishibashi / text & edit: Emi Fukushima

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自然の中に身を置く喜びを、仲間たちと分かち合う

普段からアウトドアが好きなこともあり、心惹かれる冒険は自然の中に身を置くものばかり。極限に挑む大それたものでなくとも、五感を駆使して小さな目標を達成したり、それによって少しだけ世界が違って見えたりするものにグッときます。多様な冒険に触れたくて毎年足を運ぶのが、登山や自然を題材にしたドキュメンタリー映画祭『バンフ・マウンテン・フィルム・フェスティバル』。

本拠地はカナダですが日本でも開催されていて、さまざまな良作と出会うことができます。2013年に観て印象深かったのが、厳冬期の9ヵ月間、2人の青年が北極圏の入り江にこもってサーフィンをする模様を記録したノルウェーの『North of the sun』。

映画『North of the sun 』
『North of the sun』
打ち寄せる波は素晴らしいが、ビーチはゴミだらけ。北極圏のノルウェー北部にそんな孤立した入り江があると知った青年2人。サーフボードを携え、極寒の冬をその地で過ごした9ヵ月間を記録したドキュメンタリー映画。2013年のバンフ・マウンテン・フィルム・フェスティバルで上映された。'12ノルウェー/監督・出演:ヨーン・ニュセス・ラヌム、インゲ・ウェッゲ/Vimeoで配信中。

思いつきから始まる挑戦ですが、流木や廃材を使って滞在用の小屋を建て、賞味期限切れの食品を店から譲り受け、と自分たちのできる方法で少しずつ実現していく。2人の会話や時折外から訪れるほかのサーファーとの交流も自然体で、日常と地続きに始まる冒険に心地よさと親近感を覚えます。

また滞在を終える日、彼らがお世話になった海辺を自発的に綺麗にする姿も心に留まりました。人はあくまで自然とともにある存在であることを、身をもって学ぶことができるのも冒険の醍醐味ですね。

映画では青年同士の穏やかな友情も魅力でしたが、私にとっては、苦楽を分かち合う仲間の存在も冒険における大切な要素。椎名誠さんの冒険エッセイ『あやしい探検隊』シリーズのように、男だらけの一団が野営をしながら行き当たりばったりに各地を旅するスタイルは、まさに憧れです。

大の大人たちが馬鹿げたことにも真剣に向き合うところが最高で、特に好きなのは、各地の島旅をまとめた『あやしい探検隊 北へ』。私も真似して友人と新潟県の離島・粟島(あわしま)に行き、彼ら同様に蚊の大群の洗礼を受けました(笑)。冒険にハプニングはつきもの。何歳になっても、仲間とともに本気で冒険を楽しみたいと思わせてくれる作品です。

『あやしい探検隊 北へ』著:椎名誠
『あやしい探検隊 北へ』
椎名誠を中心に結成された男だらけの野外キャンプ会による人気冒険エッセイシリーズの第2弾。粟島や八丈島などの国内の離島のほか、フィリピンやパラオなど、彼らが1980年前後に行った国内外の旅の模様が収められている。著:椎名誠/角川文庫/品切れ。

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