新たな表現を求める写真家の創造力と想像力の賜物が、越境する写真表現だろう。逸脱を恐れずに一歩を踏み出したとき、初めて新たな表現の地平が広がるのだ。
Cindy Sherman(シンディ・シャーマン)
独り遊びから始まったコンセプチュアルなセルフィ。
1980年代を代表する現代美術と写真のスター/作家自身が演じる場面を撮影するステージド・フォト(演出写真)/複数の有名作品がミックスされたり、ぼんやりとした記憶の中にある場面を写真に定着/初期はマスメディアが描く女性のステレオタイプを表現/次第に異形の者や歴史的絵画へと対象を広げる/できるだけ作家独りで制作。
Jonas Mekas(ジョナス・メカス)
日記映画の中の出会いをスチルに切り出した映画作家。
プライベートな日常を淡々と綴った日記映画の巨匠/ニュー・アメリカン・シネマの庇護者/フィルム・アメリカン・コーポラティブ呼びかけ人/16ミリ映画のフィルムから切り出した「写真」をプリント/作家自身は「フローズン・フィルム・フレームズ」と呼んだコマ撮りをしていたから可能になった「写真と映画のあいだ」。
Thomas Ruff(トーマス・ルフ)
写真を撮るのではなく、写真について考えることが作品。
少年時代は天体少年だった/師匠はタイポロジーのベッヒャー夫妻/「ポートレート」ではプリントを被写体の何倍も大きな巨大プリントに/「ポートレート」をモンタージュ写真作成機にかけて合成した作品も/新聞写真や天体写真、ネット上の写真など「自分で撮らない」写真を作品に/写真とは何か?という問いは全作品に共通。