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今、パリで最も話題のナチュラルワインバー〈バンビーノ〉のオーナーに話を聞く

ここはパリ11区、北マレの一角。毎晩、深夜まで大賑わいの空間では、壁際にセットされた大きなスピーカーからアナログの心地よい音楽が響き、テーブルやカウンターでは次々とナチュラルワインが開けられています。パリで最も旬なグルメ評価サイト「Le Fooding」で、2021年バー部門の第1位にランクされたのが、ここ〈バンビーノ〉。今夜もターンテーブルの前でお気に入りのレコードをかけている店主に、まずは話を聞いてみましょう。

photo: Ayumi Shino / text: Miyuki Kido

いい音楽、いい料理と
ナチュラルワインがつくる、
最高の空間がここに

パリではここ数年“ワインはナチュラル”が完全なスタンダードになった。

ファンもますます急増中で、様々なスタイルのレストランやバーが次々とオープンしている。その中の一軒〈バンビーノ〉は、2019年11月に開店したワインバーで、平日も満員御礼。若きオーナー、ファビアン・ロンバルディさんに聞いてみた。まず最初に、ズバリ、ここのコンセプトは?

「ナチュラルワインバー。薪窯で焼く有機食材の料理と、いい音が楽しめる店、ですね」

もともと2011年に彼が友人と開いたバー〈ラントレ・デ・ザルティスト〉も似たスタイルだった。でもその頃のパリにはそんな店が少なく、たちまち人気に。その後、彼は独立し、2015年にピッツェリア〈ファッジオ〉を開店。今や飲食店5軒を経営し、その全店でナチュラルワインを主役にしているという。

日本のジャズ喫茶をヒントに、
いい音を軸に据えた店づくり

ここ〈バンビーノ〉は彼が4番目に開いたバーだ。毎夜、常に満席の店内では皆ワインを飲みながら、ポーション軽めの料理を単品で頼み、音楽を楽しんでいる。

「実はこの店、ヒントは日本のジャズ喫茶なんです。大きなサウンドシステムがあって、こだわりの音が楽しめて……。でもジャズ喫茶ってなんとなく客が限られますよね。ちょっと年配の男性が難しい顔をして、コーヒーやウイスキーを飲みながら聴いてる、というか。でもここはワインがメインで料理もあるし、音もジャズ以外にソウル、ファンク、ディスコなどいろんなジャンルをかけてます」

なるほど、店内を見渡せば女性も多いし、ワイン以外にカクテルやビールもある。料理は前菜からデザートまで揃い、アペロでもしっかりディナーでもOK、使い勝手はとてもいい。それでいて、グループ客は断っているから、音を邪魔する騒々しさもない。

「サウンドシステムは、DJとハンドメイドのオーディオ製作をやってる友人にオーダーして作ってもらったんです。クオリティが高く、大きな音で鳴らしてもおしゃべりの邪魔にならないんですよ」

レコードのコレクションはざっと3,000枚。実は来日はもう6回。そのたびに回って買い漁り、半分以上は日本で入手したそう。

「日本に行く大きな目的が、実はそれ(笑)。盤面もパッケージも綺麗なので、日本の中古マーケットにはいつも驚かされますよ」

納得できる造り手のワインを、
時にはフィーリングで選ぶ

ワインはナチュラルの生産者だけを扱う。選ぶ際のポリシーは?

「地球に優しい栽培や醸造を心がけている造り手か、をまず重視しています。そしてフィーリングも大切。試飲で気に入り、味と価格が釣り合ったものを発注します。店は増えたけど仕入れも振り分けもすべて僕がやってます」

郊外の倉庫には系列5店舗分を約1万本もストック。その知識はどうやって身につけたんですか?

「2008年、レピュブリック地区のデザインホテル〈ムラノ〉に勤めていた頃、当時のシェフソムリエに教わりました。テロワールによって味が異なる、とかそういうレベルの基本から。出会って飲んだナチュラルワインが、スーパーで売ってるワインとは全然違うんだなぁ、とその時初めて知った(笑)。そこからはもう勉強、で」

店には常時60種ほど。例えば今日のおすすめの造り手は?

「OK、まず1人目はジャン=ピエール・ロビノ。彼はかつてパリにバー〈ランジュヴァン〉を開き、こういうワインを世に広めた一人ですね。その後、育ったロワール地方でワインを造りたい、と帰郷して同名のドメーヌを立ち上げ、いいワインを造っています。次は、サヴォワ地方のジャン=イヴ・ペロン。辛口の白、コティヨン・デ・ダムはウチの定番。彼が造るオレンジワインも好きなんですよ」

なるほど。こういうワインを注がれたお客の反応はどんな感じ?

「もちろん大好き、という人もいれば、ここに通い始めて好きになったという人も。客層は30〜40代で、店でかかる60〜80年代中心のアナログな音が好きな、落ち着いた大人が多いかな。健康を大事に、食べたり飲んだりするのはビオだけ、という人も結構います」

仕入れる食材は実際、有機で旬のもの。野菜は皮まで使ったり、廃棄物を減らすよう取り組んでいる。この盛況ぶり、次の目標は?

「東京にバンビーノを作りたい(笑)。いや結構本気で。この感じ、間違いなく日本の皆さんにも、気に入ってもらえるはず!」

〈BAMBINO〉店内
見ての通り、天井まで届く壁の棚にはレコードがぎっしり。奥の厨房からは、薪窯で焼き上げられた料理が次々と運ばれていく。ディナータイムは音楽好き、ワイン好きで、ずっと満席続き。