不動のレジェンド居酒屋といえば、玉造(たまつくり)の静かな住宅街に潜む〈ながほり〉である。
豪快にカニ丸1杯を盛り付けた名物料理を筆頭に、見事な2kg級の白甘鯛(しろあまだい)をはじめとする、関西の至宝とも言うべき鯛やアコウなどの白身魚、そして30年以上かけて各地の農家を訪問し、吟味してきた、生命感あふれる野菜類まで。「とにかく手に入る限り、最高の食材を」と、66歳の今も情熱を沸騰させる主人・中村重男さん。その仕事ぶりは堂々の高級割烹の域だが……。
「割烹=おまかせだけ、と思われるのが嫌。うちは単品料理、約80品。お客様がその日食べたいものを選んでいただける、お客様ファーストの店。仕込みも仕入れも大変だけどね」と、エネルギッシュに語る。その品書きの要点は「料理の奥行きと振り幅」。ゆえ数々の高級素材の隣に、イワシなど数百円の単品料理まで併記されるのも、なんとも粋だ。
そして〈ながほり〉といえば、40年前から日本酒の偉大さを世に発信した先駆店として、敬意を集める存在。2代目の中村海里さんは、店に入る前には料理人の修業のほかにも約1年、〈磯自慢〉で酒造りを学び、日本酒の機微を探求してきた。
そんな親子2代が日々変化を恐れず、アグレッシブに探究するのが「居酒屋、つまり居心地のいい酒屋やね。まだまだ毎日が探求。止まらない、守らないことが絶対に大切」と主人。レジェンドは今も、時とともに輝きを力強く増して、訪れる者をさらに魅了し続けているのだ。