現実から逃避するために、真正面から音楽と向き合う。
普段はNYに住んで活動しているんだけど、やっぱりクレイジーな街だと思う。昔から変わらないと思うけど、新しい音楽が次々と生まれてくるし、情報が氾濫していて。少し生活環境を変えようと思って、新しいアルバム制作のために、西マサチューセッツに1ヵ月間家を借りることにしたんだ。
もともと僕の生まれた場所で、自然が多く、本当に落ち着く環境だった。でも、本当に田舎で、よそから引っ越してきた人が珍しいみたいでさ。映画『わらの犬』みたいに次々と人が覗きに来て、プライベートなんかなかった(笑)。
ネットをつなげているから、結局ニュースをチェックして過ごしていて、新鮮な空気と夜の静寂以外は、NYにいるのと変わりなかった。そんな時に聴いたアルバムを紹介したい。人生で最も影響を受けたアルバムなんだけど、聴くことでポジティブな気分になり、新曲のアイデアが浮かんだ。僕にとっては想像力を広げてくれた作品だね。
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1980年代前半までに、ルチオ・フルチ監督が制作したイタリアンホラーはどれも素晴らしく、スコアを担当したファビオ・フリッツィの楽曲も最高。『サンゲリア』(79年)もいいけど、『ビヨンド』のコーラスとピアノの旋律は、いつ聴いても心を清めてくれる。映画はホラーだけど(笑)。

ブルースとカントリーを融合させたボビー・ウーマックの弟と、サム・クックの娘による夫婦デュオ。1983年に発表されたデビュー作は、多幸感溢れるメロディと、80年代特有のキラキラしたサウンドメイクが最高。子供の頃、MTVでよく流れていて、最近聴き直したら素晴らしかったんだ。
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最近アンドレ3000と知り合い、一緒にスタジオへ入ったばかり。『JIMI』(2013年)でジミ・ヘンドリックスを演じたり、俳優業が目立つけど、音楽家としても変わらず素晴らしかった。ヒップホップマナーをぶった切るような発想で、僕の凝り固まった頭を解きほぐしてくれた。
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これは、学生時代からずっと聴いているムーグ・シンセサイザー奏者のアルバム。1973年のアルバムで、当時のムーグのレコードって、有名な曲を変わったムーグの音色でカバーするものが多いんだけど、この人の作品はすごくノイジーなんだよね。この冒険心には勇気づけられる。

1990年代のデトロイトのエレクトロが再評価されているけど、僕にはホアン・アトキンスの作品があれば十分。「Clear」(83年)など、彼の作る音楽は半分機械で、半分人間というコンセプトが貫かれている。ジャケットのシンセの十字架など、終末思想的なテイストがヤバい(笑)。
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ブライアン・イーノは大好きだけど、僕にとってアンビエントといったらエノ・ヴィルジュイス。抑揚はないけど、美しいシンセの音色の中を漂うような感覚だね。音楽にリラクセーションはあまり必要ないと思っているんだけど、これは別格。ベッドで聴いていると、よく寝られる。
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この作品を発表した〈Nonesuch Records〉はスティーヴ・ライヒなど現代音楽や、ジョン・ゾーンといったフリージャズなどをリリースしている。スコット・ジョンソンのアルバムは、人の話し声と電子楽器をループさせ、コラージュした作品。先鋭的な発想は80年代の作品には思えない。
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1971年に発表された美しい音楽。彼女自身が書き、ピアノを演奏し、歌った楽曲はとにかくシンプル。すごく寂しい歌詞とメロディだから、夜に一人、じっくり聴き込む。死後の世界で鳴っている音楽というのは、こういう美しいものじゃないかなって想像しているんだ。
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タンジェリン・ドリームのクラウス・シュルツが創立したレーベルから、1981年に発表された作品。今のシンセサイザーの音色は、精度が上がって完璧に管理できるけど、当時はプログラムミスもあって、面白い音が発見できたと思う。それを想像させてくれる作品。
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日本では“キョージュ”と呼ばれているそうだね。大学時代、僕の本当の教授からYMOとクラフトワーク、イーノのレコードをもらったんだ。以来、坂本さんは僕のアイドル。このアルバムは、実験性の強いエレクトリックミュージックで、何度聴いても新しいアイデアをくれる。