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箭内道彦、エリイ、大根仁「おなやみ相談室」:自分を生きるって?

クリエイティブディレクターの箭内道彦、Chim↑Pom(チンポム)のエリイ、映画監督の大根仁が読者のお悩みに答える連載の第190回。見事に三者三様な回答をぜひご覧ください。お悩み相談も随時受付中。前回の「世代を超えて語りたい」も読む。

Illustration: sigo_kun / Edit: Asuka Ochi

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夫も娘も家族は二の次。私が家事をしたり、家族のことを考えて過ごす日々に、誰も感謝をしてくれません。そのことで夫と口論になり、もっと自分を生きた方がいいと言われました。自分を生きるってどういうことですか?私はそうしているつもりで、じゃあなぜ家族になったのかと憤り悩んでいます。どう思いますか?
(主婦/45歳/女)

自分を生きるって?

箭内道彦

感謝、されたいですよね。家族は見返りを求めない無償の愛で成り立つ関係なのだと考えても、やっぱり言葉にしてほしい時がある。嬉しく、それで救われ、また頑張れるのだとも思います。ある知人の家族は、家族の間で何かを相手にしたことに対してお礼を言われると、必ず「イッツ・マイ・プレジャー」と微笑み返します。そうすると感謝する側も感謝を言いやすくなる。「ありがとう」と「マイ・プレジャー」のワンセット。そういう瞬間も「自分を生きている」っていうことなのではないかと僕は思いました。

エリイ

娘の立場からの目線ですが、うちのお母さんは私が子供の時も、思春期の時も成人した後も寝ている私の横でガンガンガンガン掃除機をかけ続けました。静かにしてよ!と言ってもかけない日はたったの一日もなく、ハタキを振り雑巾で床を拭き続けます。今から夜ご飯を食べに出かけるからと伝えに居間に行くと晩ご飯は?ご飯食べて行きなさい何にする?餡掛け八宝やきそばね、と答える間もなくテーブルに食事が並んでいく。何十年も揺るがずに自分を生きているのを目の当たりにし続ける。ありがとう、感謝しています。

大根 仁

1980年、アナーキーというパンクバンドが「何が日本の象徴だ、何にもしねぇでふざけんな」と歌っていて、短絡&バカなパンクス気取りの中学生の僕は「そーだそーだ!」と拳を上げていたわけですが、大人になって象徴とされる方のとんでもないスケジュールの「すべての国民の幸せを願う」公務を知り、申し訳ない気持ちになりました。その仕事は主婦と似ている気がします。「自分を生きる」の自分とは、まさに自分であり、他人にとやかく言われる筋合いはないのです。すなわち、何にもしねぇでふざけんな!なのです。

TUMIのバッグと黒川隆介

詩人・黒川隆介の“余計なものを持たない旅”と、質実剛健な〈TUMI〉のバッグ

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