Florilège(外苑前)
ノンアルペアリングの先駆的存在。料理ともども深化中
そもそも、〈フロリレージュ〉がノンアルペアリングを始めたのは現在の地に移転した2015年のこと。すでに世界のフーディやヴィーガンの間では常識になりつつあったが、日本では未開といってもいい頃だった。世界を見据えて、自分の店のあるべき姿を考える川手寛康シェフは、ノンアルカクテルに大きな可能性を感じていた。
パッと見シンプル、その実、トリッキーなまでに繊細で複雑な味の構築が潜むシェフの料理と響き合うペアリングは、かなり高度なレベルを要求される。シェフの意向を汲みながら、食材を操り、発酵させたり、煮出したり、水に浸けて真空にし、香りや旨味を抽出したりして“今”なカクテルを生み出すのは、2023年で33歳になったバーテンダーの髙田真之助さんの感性だ。
「カクテルのパーツはゼロから作ります」と髙田さん。旨味や苦味、青味、甘味といった、食材の持つ様々な味や香りを抽(ひ)き出し、重ね、料理と引き立て合ったり、高め合ったり。カクテルで、レストランの楽しみが何倍にも膨らむ。
毎日のように変化する料理に即応するペアリング。研究の連続である。日々刻々、さらなる深化が続く。
Don Bravo(国領)
ノンアルカクテルって面白い♡と体感できます
コースの終盤、そろそろデザートかなというところで登場するのが〆のピザ。〈ドン ブラボー〉のスペシャリテだ。窯の前にいるのは、さっきまでドリンクをサービスしていた藤井淳利さんではないか。おお、ピザまで作るのか。
イノベーティブなイタリアンで客を魅了するこの店。進化は止まらず。「最近はイタリアらしい骨太でシンプルな料理を少しずつ増やしています。もちろん、自分たちらしく、ひとワザ効かせていますけど」と平雅一シェフ。そんな料理にカクテルは滑らかに寄り添う。
藤井さんのペアリングのコンセプトは明快だ。「わかりやすくキャッチー。ストリート感があってダイレクトに楽しめること」。アルコールとノンアルのペアリングを注文するカップル客も多いので、ノンアルでも酒と同じテンションで提供する。そのために、ジンもカンパリもワインまでもノンアルを用意している。
ドリンクの準備をするのは客席から一番目立つ店の中央。一斉スタートなので、グラスがずらりと並ぶさまはちょっとしたエンターテインメントだ。カクテルの面白み、ペアリングの楽しさを目からもリアルに実感できる。