朝は手軽に支度ができる
シンプルなものがいい。
野村友里さんが、ラジオのJ-WAVEで朝時6から9時までの番組をやっていた頃、時折、卵の黄身のような朝日が昇ってくるのが見えた。「誰にも平等に朝が来る」。
まだ夜を引きずっている人もいる中で、完全に明けきらない、その朝日と出会うたび、そう感じていたという。そんな野村さんが使う朝の道具は、ぼうっとした頭でも使える、いつも手に馴染んでいるアイテムだ。
「朝に使うものだと、私は大袈裟でないものがいいですね。洗い物が多かったり重かったりするよりは、簡単に使うことができるお気に入りがあると、気持ちよく一日のスタートを切れる気がします」
また、朝食作りを面倒に感じず、準備している時間を大切にすることが、朝には重要だとも言う。
「これから一日忙しいだろうけれど、ゆっくりとコーヒーやお茶を淹れたり、だしを取るなどの時間を少しでも取れると、始まりとしては上々ではないでしょうか」
もちろん、いつもゆっくり過ごせるわけではない。けれど、ワンアクションだけでもそういう時間があると、心がリフレッシュする。
「毎朝必ずこれをやる、という決まり事はない。でも、花に水をやったり、窓を開けたり、気に入ったコップで水を飲んだり、そういう小さなことでも好きなことをできると、今日はいい日だな、と思います」
その気分をさらに充実させるのが、今回、紹介してくれた朝の道具でもあるのだ。
「器の場合は、色は白やきれいな色味のものがいい。もちろん、益子の二階堂明弘さんの器のように、濃い色で大好きなものもあるのだけど、朝は、なんとなくしっくりこない。光があるからなんでもきれいに見えるけれど、そういう光に映えるようなクリアでクリーンなものに、つい手が伸びてしまいます」
その一つが、ロサンゼルスに工房を構える陶芸家、アダム・シルヴァーマンのピンク色の器だ。これにはグラノーラやフルーツを入れるのが似合うのだという。うっかりしてちょっと欠けさせてしまったが、それをどう継ごうかと考えるのも楽しみだという、大好きな器だ。
器用な便利さよりも、
心地よさを優先します。
朝食のメニューは特に決まっていない。パンだったり、ご飯だったりするが、必ず飲むのがジュース。小松菜やホウレン草、ケールなどの緑のものとニンジンやショウガ、柑橘系のフルーツ、野菜の切れ端などをミックス。カツオと昆布でだしを取った味噌汁も、ほぼ毎日作っている。
「ジュースやスープなど汁ものは飲むようにしています。あとは、その日の体調や状況に合わせて考えますね。前の日においしい野菜があったら、それを使って作ることもあるし、昼を食べる時間がないと思ったら温かいものを飲むようにしたり。私の場合は、起きたらいきなり準備を始めるんですよ」
使う道具を選ぶ基準は「使いたいか使いたくないか」。利便性だけではない、と言い切る。どれだけ機能がよくても、佇まいや心地がよくないものは使いたくないのだそう。
「その場の空間にあって馴染むものや、直接触れるものだから、触り心地のいいものを使いたい。赤木明登さんの漆器も、持つたびにいいな、と思います。触って気づきのあるものがいいのかな。辻和美さんのグラスは、紅茶を入れると色が変わるな、とか、この作家にそろそろ会いに行きたいな、とか、毎回でなくてふとした時に心を動かされるものが好きです。なので、部屋にあるものも、大量生産品より作り手の存在が見えるものが多いです」
購入する際も、それをどう使うかはあまり考えず、そのものが放つ魅力に惹かれて求める。
「作家ものもたくさんあるけれど、柔軟な人たちばかりだな、と改めて思います。タイプでいえば思い詰めて作るのではなく、楽しんでいる人たち。アート作品だと、身を切るようにして作り出して、それで人の心を震わせたりとかするのでしょうが、日常のものなので、もっと優しいというか、いろいろな人がいろいろな思いで生きているんだよね、と元気をもらう感じ。アートではないけれど、デザイン重視のものよりは有機的なものが集まっていると思います」
また、これは日常に、これはよそゆきにと分けるのではなく、多少のTPOはあるとしても、普段の生活でも、美しいと思えるものしか使わないようにしている。
「割ったらどうしようとか気張って使うのはイヤなんです。きれいだからといってしまい込むのでなく、いつでも手に取って使えるようにしています。価格が安くても高くてもそれは変わらない。外に出しておきたくなるものが基本ですね」
そうやってだんだんと増えてきた道具たち。今、悩んでいるのは炊飯器だという。
「機械ものが苦手なんです。でも、寝かせ玄米は何度食べてもおいしいな、と思っていて、これを食べるためには炊飯器の保温が必要。幾度となく逡巡しているけれど、まだ購入に踏み切れていません」
木や石、陶器など自然素材のものが多い野村さんの家に炊飯器がやってきたら、どのように馴染んでいくのか。それもぜひ一見してみたい。