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人気はC級トリック目線はA級。スケートシューズコレクターの偏愛収集録

ある一つのカテゴリーに魅了され、収集し、そして“履く歓び”まで味わい尽くす“真の”スニーカーマニア。スケートシューズに魅せられた猛者・中村晋久さんに、自慢の逸品を披露してもらった。

初出:BRUTUS No.894「最高愛と欲のスニーカー。」(2019年6月1日発売)

photo: Shimpei Hanawa / text: Naoto Matsumura

消耗品のためコレクトが難しいスケートシューズ

安いけどなかなか出会えない、出てきても状態の良いものは極めて少ない。そんなコレクト難易度の高いユーズドのスケートシューズを約300足も揃える中村晋久さんは、自身もスケーターで、スケートボードフィルムやマガジンを手がけている。幼い頃に憧れたスケーターが履いていたスニーカーを手に入れたことがきっかけで集め始めたという。

「あまり注目されないジャンルなので高くはないんです。友人のスケーターから譲ってもらうケースも多いですが、お目当てのものにはなかなか出会えません。何年も探してようやく見つけたものがひどく傷んでいたり、良い状態のものを手に入れるのは大変ですね。スケートシューズは消耗品なので」

スケートボードはトリックを行う際、グリップテープに靴をこすることが多いため、一日中練習してアッパーに穴が開いたなんてことがしばしば。耐久性はもちろんのこと、素材や形一つでトリックのやり方、やりやすさが大きく変わるので、意外とスケーターの靴選びは繊細なのだと話す。

「手に入れたシューズは未使用品とかでない限り、一度履いて滑ってみるんです。その中で気づいたのは、僕にはローテクでもなくハイテクでもないシューズが合うということ。ナイキ『GTS』のようなテニスシューズや、リーボック『ワークアウト』のようなフィットネスシューズを使うスケーターも多いですが、あれもちょうどいいですね」

〈ADIDAS SKATEBOARDING〉BUSENITZ PRO、〈ADIDAS〉LANCE MOUNTAINⅡ、〈CONVERSE〉PRO LEATHER OX、〈CONVERSE〉のスケートシューズ、〈DC SHOES〉LYNX、〈SAVIER〉FULTON AIR TRAINER 1、〈TAS SKATEBOARDING〉SHIN MID、〈ZERO TWO〉100% CRUELTY-FREE SHOES
1990~2000年代を中心に、スケートボードに付随するスニーカーを約300足所有。注目されない靴ゆえに、スケーター仲間の“こんなのあったね”という言葉に救われるのだとか。

中村さんのお気に入りのコンバース「プロレザーOX」も、もともと一般向けに発売されていたものをプロスケーターが愛用したことから、ライダー契約を結ぶまでに至ったシューズだという。

「スケートシューズではないけど、“スケーターが愛したシューズ”がたくさんあるんです。僕も10代の頃に観たVHSの中で、〈T19〉というチームの尾澤彰さんがアディダスの『キャンパス』を履いているのを見て真似していました。僕の中でスケートシューズとは“その靴でスケートボードができるかどうか”なんです」

スケーターズ名作&テクノロジーシューズ

SAVIER/FULTON AIR TRAINER 1(2002)

〈SAVIER〉FULTON AIR TRAINER 1
あの名作っぽさが随所に宿る珍ブランド。 ナイキSBの登場で消滅した、いまは亡きナイキ傘下のスケートシューズブランドが、スケートボードブランドのハビタットと共同開発したモデル。「ダンク」を彷彿とさせるシューレースや「エア フォース 1」をにおわすガムソールなど、随所にナイキを感じさせてくれるのが面白い。

CONVERSE/PRO LEATHER OX(1995)

〈CONVERSE〉PRO LEATHER OX
コンバーススケートボーディングの前身。 まだスケートシューズを作っていなかったコンバースが、プロスケーターのガイ・マリアーノやリック・ハワードを誘って、スケートチームを作った際にライダーに配ったモデル。カラーバリエーションも豊富で、この黄×水色はボビー・プレオが着用していたレアカラー。

ADIDAS SKATEBOARDING/BUSENITZ PRO(2012)

〈ADIDAS SKATEBOARDING〉BUSENITZ PRO
サッカーとスケートシューズを融合。 プロスケーターのデニス・ブセニッツが、同ブランドの「サンバ」をベースにリリースしたシグネチャーモデル。サッカーシューズを忠実に再現した長めのタンには切り取り線がプリントされ、スケート時に邪魔だと感じたらハサミで切る仕様。中村さん所有のこちらは限定カラー。

ADIDAS/LANCE MOUNTAINⅡ(2000)

〈ADIDAS〉LANCE MOUNTAINⅡ
とにかくゴツく、オーバースペック。 プロスケーター、ランス・マウンテンのシグネチャーモデル。後にナイキからもランスのモデルが発売されているがこちらが元祖で、稀少価値も高い。レザーアッパーによる強度やボリューム感、クッション性と反発性を備えるadiPRENEソールといったオーバースペックがたまらない。

CONVERSE/UNKNOWN

〈CONVERSE〉のスケートシューズ
ミルスペックを備えた、超頑丈アッパー。 スケーター仲間からもらった一足で、過去にスケートボード雑誌で見てから、脳裏に焼き付いて離れなかったという珍品。スエードベースで、トリックする部分に防弾チョッキの生地が縫い付けられている。丈夫だが、中村さん的にはデッキテープとの相性があまり良くないのだとか……。

TAS SKATEBOARDING/SHIN MID(2012)

〈TAS SKATEBOARDING〉SHIN MID
日本が誇る機能系スケートシューズ。 日本のシューズメーカーが日本を代表するプロスケーター、岡田晋と製作したシグネチャーモデル。スケーターから人気だったシューズブランド、タスマニアが満を持してリリースしたスケートラインで、足を固定するインナーソックスや、ポリス対策?の隠しポケットまでも装備。

ZERO TWO/100% CRUELTY-FREE SHOES(1992)

〈ZERO TWO〉100% CRUELTY-FREE SHOES
全面マジックテープのアッパー⁉ ブライアン・ロッティやショーン・シェフィといったビーガンスケーターたちが立ち上げたマイナーなシューズブランド。アッパー生地全体がマジックテープの繊維状になっていて、デッキテープが当たる部分に付属の生地を貼り付けるというなんとも独創的なテクノロジーを採用。

DC SHOES/LYNX(1999)

〈DC SHOES〉LYNX
スケートシューズブームの火つけ役。 2000年前後に大ブームを巻き起こしたアメリカを代表するスケートシューズブランドの名作。爪先部の反り上がりや、アッパーのシンサテック素材など、独自のテクノロジーを採用。昨今ヘリテージコレクションの名のもと復活し話題だが、こちらは中村さんが当時愛用したオリジン。