Love

時代を超えて多国籍軍行進中。ミリタリーシューズコレクターの偏愛収集録

ある一つのカテゴリーに魅了され、収集し、そして“履く歓び”まで味わい尽くす“真の”スニーカーマニア。ミリタリーシューズに魅せられた猛者・田中聡介さんに自慢の逸品を披露してもらった。

初出:BRUTUS No.894「最高愛と欲のスニーカー。」(2019年6月1日発売)

photo: Shimpei Hanawa / text: Naoto Matsumura

ファッションスニーカーとの密接な関係に着目

ファッションブランドがデザインのモチーフにするなど、なにかと目にするミリタリーシューズだが、京都のヴィンテージショップ〈カプリ〉のオーナー田中聡介さんが所有するものは一味も二味も違う。

一回のバイイングで約40日の時間をかけアメリカ、ヨーロッパを巡り、それを18年続けていても、めったにお目にかかれないレアものばかり。世界的コレクターに直談判して入手したりするというから、そのラインナップがいかにすごいかが窺えよう。

「販売員としていろいろなものを提案しないといけない立場で恐縮ですが、自分の足元はいつもミリタリーシューズ。軍用の靴は機能性を探るととにかく面白い。バリスティックナイロンやビブラムソールを使っていたり、予算度外視のオーバースペックが愛すべきポイント。またその機能が意味を持って搭載されているところに魅力があると思います。

ニューバランスの『993』というモデルは米軍がフィジカルトレーニングで使用しているほど履き心地抜群で、長時間立ちっぱなしの僕にうってつけの一足。履くことが前提なので基本どれもデッドストックで手に入れるようにしています。レアなものはどうしても自分用にしてしまいがちですが、2足以上見つけた時はしっかり販売しています」

〈AIGLE〉FRENCE NAVY、〈HI-TEC〉BRITISH TRAINER、〈maccheronian〉ITALIAN ARMY TRAINER、〈MAGNUM〉BRITISH TRAINER、〈SKYDEX〉BATTLE TRAINER、〈SPERGA〉ITALIAN NAVY TRAINER、〈US RUBBER COMPANY〉US TRAINER、EAST GERMAN TRAINER
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツまであらゆる軍もののヴィンテージスニーカーを年代問わず網羅。古着屋ゆえに、オーナーの気分と在庫次第でレア品が放出されることも。

有名ブランドのスニーカーでは物足りなくなったという田中さん。

「もちろんナイキやアディダスの古いスニーカーは好きです。でもそれらの名品に比べ、人が見慣れないものだから“何これ⁉”という驚きを与えることができます。中にはナイキの『エア マックス』っぽい軍用スニーカーとかもありますし(笑)。ミリタリーシューズは、大手シューズカンパニーが国のために手がけているものが多くあるから、知れば知るほど奥が深い。

プロケッズの前身であるUSラバーカンパニーが1950年代頃に手がけた靴なんて、後の『ロイヤルアメリカ』というモデルそのもの。有名デザイナーがデザインのモチーフにしていたりするし、多くのスニーカーの元ネタだったりするんですよ」

企業ものからデザイナーズものまで様々!

SKYDEX/BATTLE TRAINER(2014)

〈SKYDEX〉BATTLE TRAINER
あのエアシューズとそっくりなのには理由が。ヘルメット内部の衝撃吸収材などを作り、ナイキのエアシステムの開発にも大きく関わったスカイデックス・テクノロジー社が開発した軍用トレーニングシューズ。「エア マックス」のようなルックスに、取り外し可能な踵(かかと)部のARMYマークや、EVAソールなどミルスペックが宿る。

MAGNUM/BRITISH TRAINER('00s)

〈MAGNUM〉BRITISH TRAINER
地元ポリスも信頼するメーカーの渾身作。タン裏にイギリス政府官給品を意味するブロードアローの刻印が記されているスニーカー。加えてビブラムソールを用いていることからも特殊部隊用のトレーニングシューズだったのではと推測される。オールブラックの装いからポスト・モダンミリタリーとして評価を受けている。

HI-TEC/BRITISH TRAINER('90s)

〈HI-TEC〉BRITISH TRAINER
各社がデザインソースにする名品のオリジン。昨今のファッションブランドがこぞってデザインのモチーフに使っている、「ミリタリートレーナー」の最たるモデルといわれているのがこちら。1974年にイギリスで誕生したアウトドアブランドが製造。田中さんは次作モデルとなるシルバーシャドーなども併せて所有している。

ITALIAN ARMY('80s)

〈maccheronian〉ITALIAN ARMY TRAINER
ソールにはイタリア軍を示すパッチも配備。イタリア陸軍に官給されていたトレーニングシューズ。キャンバス×スエードとこの配色は、あらゆるブランドがモチーフにしている元ネタ。バルカナイズド製法で靴底とアッパーの結合が強いから今でも履けるが、ワイズが細すぎるゆえ日本人にはちょっと窮屈なんだそう。

AIGLE/FRENCE NAVY('50s)

〈AIGLE〉FRENCE NAVY
あの仏ブランドのNAVY用シューズ。1853年からフランスでラバーブーツを手がける老舗ブランドが、1950年代にフランス海軍のために製作したデッキシューズ。海軍ものの多くは紺×白色が主流ゆえに、世界大戦頃に存在したとされる紺×黒色はかなりレア。田中さんもほかで見かけたことは一度もないのだそう。

EAST GERMAN TRAINER('70s)

EAST GERMAN TRAINER
3本ラインが加わればあのモデルにそっくり。当時、旧東ドイツ軍がトレーニングシューズとして使用。田中さんもホワイトはたまに見かけるが、ブラックは5年ほど見ていないのだという。アディダスのサンバに似たようなデザインで、ソールがアディダス製であることから同社が開発していたものと考えられる。

US RUBBER COMPANY/US TRAINER('40s~'50s)

〈US RUBBER COMPANY〉US TRAINER
名作USバッシュの大戦モデル?米・東海岸の老舗シューズメーカー・プロケッズの前身ブランドが手がけたトレーニングシューズ。1958年に発売された「ロイヤルアメリカ」を彷彿とさせる作りで、インソールとタンの裏に旧カンパニーの刻印がスタンプされていることからも世界大戦中のもので間違いない。

ITALIAN NAVY(2001)

〈SPERGA〉ITALIAN NAVY TRAINER
某イタリアシューズとウリ二つのNAVYもの。海軍用のデッキシューズながらも、外羽根式やハーフシェルにイタリアらしさを感じる。インソールにコントラクトナンバーが印字されていて、同国の老舗シューズブランド、スペルガがOEMで依頼していた工場で作られていたものと見て取れる。比較的新しい年代ながらレアもの。