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海外でも“YOSHOKU”は人気です。ニューヨークの洋食店2選

洋食のおいしさは海の向こうにもとどろいている。日本でファンになったり、近年は映画やドラマ、アニメやSNSで見た“日本のあの食べ物”を体験したいと来店する人も多いとか。NYの人気店へ!

photo: Omi Tanaka (Interior at Bar MOGA), Nao Fukui / text: Momoko Ikeda

見た目のキャッチーさが注目され、“Sando”も人気を牽引する

和食は言うまでもなく人気だが、実は今NYでは、カツサンドや卵サンドなど日本スタイルのサンドイッチがブームの兆し。カフェに“Sando”のメニューを見ることが増えてきた。が、こと“洋食”となるとまだまだ知名度は低い。

“Japanese-style western cuisine”と説明されることがあるが、“YOSHOKU”って何ですか?と聞く人や、生卵を食べる習慣がないため、オムライスの鍵となるとろけるような半熟の卵に拒否反応を示す人も多い。

一方で、「SNSで卵に包丁を入れて中身がとろっと出てくるのを見て興味を持って食べに来た」という人や「アニメや漫画の中に出てくる洋食のオムライスやサンドイッチが実際に食べられるのが嬉しい!」という海外ならではの声が聞こえてくることも。

味つけに関してはまだまだニューヨーカーには馴染みがないことも多く、広く受け入れられるようになるには少し時間がかかりそうだが、じわじわとした洋食人気の広がりは期待できそうだ。

BAR MOGA

正統派な洋食の普及に挑む洋食専門店

新たな日本食レストランが日々できるニューヨークで、1920年代の日本をテーマに2017年にオープンしたカクテルバー。シェフの慎太郎・エレアザル・奥田さんが他店との差別化を狙って選んだ食のテーマは“洋食”だった。「日本でウイスキーを造り始めたのは1920年代。洋食が広がったのもその時期です。

日本人の体の小ささを克服すべく取り入れた海外の食文化を和食に寄せて生まれたという洋食の誕生秘話も、ニューヨーカーにとって目新しいストーリーだと思いました」。仔牛肉を3日間煮込んだデミグラスソースなど味に定評があるが、慎太郎シェフは今でも年間30回以上もレシピの微調整を続けるなど、こだわり抜く。

「現地の人にはまだハードルが高い部分もありますが、カレーも28種類のスパイスを使って丹念に作るなど、僕の熱量で口に入れた時に壁を崩せるよう挑戦を続けています」

ニューヨーク〈BAR MOGA〉シェフの慎太郎
サーブされたオムライスの卵に包丁を入れるシェフの慎太郎さん。

Aoi Kitchen

洋食の世界観を空間含めて表現する店

「子供だった1990年代に韓国で過ごしたのですが、当時母が作ってくれた、ケチャップでハートや私の名前が書かれたオムライスがとても思い出に残っています。誕生日には洋食レストランで家族で食事をしたりもしていましたね。洋食は、韓国でもノスタルジックな料理として人気ですが、NYにはまだ日本の洋食屋さんの雰囲気まで伝わるお店がなかったので、ぜひ作りたいと思ったんです」そう語るのは〈アオイ・キッチン〉のオーナーのジョーイさん。

和と洋の組み合わせである洋食は、NYのようなカルチャーが混ざった町で受け入れられるはずだと思ったそう。また、日本にも何度もリサーチに訪れる中で、日本の食を取り巻くカルチャー全体にも魅せられていったとか。「例えばオムライス一品だけで20年以上勝負している店もありますよね。シンプルに見えるけど実際はとても深い、洋食の魅力を伝えていきたいですね」