長年、山と自然をテーマに表現活動を続ける写真家の野川かさねさん、編集者の小林百合子さんの新刊『山の時刻(とき)』が12月19日に刊行された。
15年以上ともに山を歩き、数々の著作を世に出してきたふたり、今回の著作は野川さんが撮り溜めてきた作品の中から129枚を厳選し、その写真からインスピレーションを得て、小林さんが120本のショートエッセイを執筆したビジュアルエッセイ集だ。
面白いのは、それぞれの写真が「いつ」「どこで」撮影されたものかはあえてコミュニケーションをとらず、1枚1枚の写真から自分の山での記憶を辿り、小林さんが執筆したというところ。中には八ヶ岳で撮影された花の写真を見て、北海道の山の思い出を綴ったものもある。
「野川さんが写した129枚の写真、それは瞬間であり、点であり、“時刻”です。そのすべてをつなぎ合わせたとき、そこに一筋の時間の流れが生まれる。それは、この本をめくる人の数だけあって、すべて異なり、固有で、かけがえのないもの。いつも自分の中にあり、ゆったりと流れる時間は、いつか自分を支え、励ましてくれるものになる。この本が、自分の中だけに流れる“もうひとつの時間”に気づくきっかけなれたら嬉しい」と小林さん。
春夏秋冬に章立てされているので、ベッドサイドに置いて1日1ページ、その時季の写真とテキストを味わうのもいいかも。都会の暮らしの中でも、そっと季節の移ろいを感じられる美しい一冊だ。

また、刊行を記念して東京と名古屋でトークイベントも開催される。
東京は1月22日(木)下北沢の本屋B&Bにて、名古屋は24日(土)ON READINGにて開催。こちらもぜひチェックしてみて欲しい。