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場所は替われど、棚作りは変わらない。学芸大学の本屋〈古本遊戯 流浪堂〉

書店では今日も大量の本が出入りしている。常に変わり続ける本屋の棚はどのように作られ、独自のスタイルを生み出しているのか?2024年にオープンし、出来たてほやほやの棚を持つ書店の棚作りに迫ります。

本記事は、BRUTUS「理想の本棚。」(2024年12月2日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Ryota Mukai

名店、復活。場所は替われど、棚作りは変わらない

建物の老朽化のため2022年に休業した〈古本遊戯 流浪堂〉が、約2年を経て再出発を果たした。棚の大半は約1年半かけて構想・製作したオリジナルだ。「本棚というよりも、大きな箱の集合体のイメージなんです。高さは雑誌が収まるくらい、奥行きは単行本が前後に2列並べられるくらいのサイズでオーダーしました」と、店主の二見彰さん。本の並びも、1箱単位で考えるのが基本だという。

「ざっくりとテーマを立てて、連想ゲームの要領で本を並べます。頭の中と同じように、ランダムで未完成然とした方が面白い。だから、大小様々な本が集まるのは大歓迎です」。一目で棚のテーマが掴(つか)めるよう、前面にはポップな本を配置。長年にわたり磨き上げられてきた職人技だ。

その起源は1990年代に遡る。「振り返れば、最初に働いた古本屋〈湘南堂ブックサーカス 綱島店〉での経験が大きいですね。ポスターなど本以外の商品もあり、並べ方にルールはなくて。その自由な空気が反映されているのかもしれません」。歴史を受け継ぎ、今なお脈を打ち続ける、さながら無形文化遺産のような棚なのだ。

古本遊戯 流浪堂の外観
所は学芸大学駅至近の高架下のスペース。映画ポスターや、絵本やアートブックなどの大判本が店外を向いて並ぶ。

奥までぎっしり。薄手の一冊をお見逃しなく

こちらは写真集の棚をクロースアップしたもの。奥を覗けば、若木信吾の『young tree』をはじめ、冊子のように薄い本がこうも詰まっている。背表紙がない本は、棚差しにせよ横置きにせよ、一目ではわかりにくいうえに、写真集のように判型が大きいと前面に面出しするのもスペース上難しい。気になる棚は奥まで探索を。

棚差し、横積み、DVDも。これが〈流浪堂〉の通常運転

五代目古今亭志ん生に六代目三遊亭圓生と、落語界のレジェンドが集う棚。棚差しの前に横倒しで積み上げられた上に、棚の上にまで本が溢れている。そこには志ん生を敬愛するビートたけしの『風雲!たけし城』シリーズのDVDも。落語というワンテーマからメディアを問わず展開する、まさに〈流浪堂〉らしいスペースだ。

キモとなる棚は店奥に。アングラカルチャーに浸る

とびきりカオティックな棚が店奥の角にある。古くは春画から、大道芸、ストリップ、ロマンポルノなどなどへと続くアングラカルチャーのたまり場だ。休業前の〈流浪堂〉の頃から、店には欠かせない一角だという。そのカルチャーの集大成のような一冊『見世物小屋の文化誌』は二見さんのバイブル的存在でもある。
No.1021「理想の本棚。」ポップアップバナー