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ヒップホップとジャズ。レジェンドドラマー、ネイト・スミスが考える両者の共通点

21世紀以降のジャズシーンは器楽奏者たちによるヒップホップを試行錯誤する実験の場でもある。そこでは一流のジャズミュージシャンでありながら、同時にビートメーカーでありプロデューサーでもあるようなアーティストがひしめいていて、ネイト・スミスもその一人だ。この世界最高のジャズドラマーはヒップホップのビートをサンプラーに打ち込むこともできるし、そのニュアンスを生演奏で再現することもできる。そんなネイトに、彼が考えるジャズとヒップホップの関係を語ってもらった。

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text: Mitsutaka Nagira / photo: Jun Ishibashi / special thanks: Blue Note Tokyo

「ビズ・マーキーの『Just A Friend』を(1989年頃に)聴いて、ビートやサンプルに最初に惹かれたことを覚えている。でも、本気になったのはア・トライブ・コールド・クエストを聴いたときだね。Qティップが作るドラムのザラつき感やフェンダーローズのサンプルの美しさに惹かれたんだ。その後、サンプラーのMPC2000を手に入れてからサンプリングに本腰を入れ始めて、チョッピングやサンプリングを理解し始めた。その頃J・ディラが頭角を現してきて、僕も彼のような音を出したいと思うようになったんだ」

ヒップホップのビートをドラムセットで演奏すること

一方で、彼はドラマーでもあり、ドラムでヒップホップのビートを叩く手法にも惹かれていく。

「ヒップホップドラマーを初めて耳にしたのはザ・ルーツのアルバム『Do You Want More?!!!??!』を聴いたときだね。そこでクエストラヴの天才ぶりと彼がブレイクビーツをものすごく正確に叩いているという事実に気づいたんだ。でも、ヒップホップを学ぶ際に最初に参考にしたのは、サンプルの元ネタのクリエイターたち、つまりレコードで演奏していたクライド・スタブルフィールドやアイドリス・ムハマッド、ハーヴィー・メイソンだった。彼らを真似ることを覚え、その後、J・ディラなどのビートを研究するようになり、それからMPCに合わせて練習してプログラミングされたグルーヴを演奏するようになったんだ」

ヒップホップと向き合ってきたジャズドラマーは2つの関係について、最後にこんな言葉をくれた。

「2つはアメリカの黒人音楽の延長上にある。スウィング、ブルース、反復、コール&レスポンスの要素が、どちらにもあるんだよね。同じDNAを共有しているんだ。だから、両者はそこまで違わないんじゃないかな。ヒップホップはジャズの延長、もしくは進化形で、同じ音楽の系譜だと思うよ」

HIP HOPとJAZZの蜜月を感じる4枚

『Midnight Marauders』
ア・トライブ・コールド・クエストはヒップホップにおけるサンプリングの美学を突き詰めたグループ。ベース奏者のロン・カーターにトラックの中で演奏させたり、生演奏との融合も目論んだ。メンバーのQティップはソロ作でもその実験を続けている。

『Fantastic vol.2』
ヒップホップ・プロデューサーのJ・ディラが所属していたのがスラム・ヴィレッジ。ドラムを敢えてズラして打ち込むことで生み出した独特なグルーヴは世界中のドラマーたちをも魅了し、J・ディラは21世紀のジャズに最も影響を与えたアーティストになった。

『Do You Want More?!!!??!』
サンプリングやプログラミングされたビートで作られているのが一般的だったヒップホップをミュージシャンのバンドサウンドで演奏するスタイルを完成に導いたのがザ・ルーツだった。クエストラヴのドラムはすべてのヒップホップドラマーたちの基本になっている。

『Kinfolk 2: See The Birds』
ここに収録された「Band Room Freestyle」は即興で録音された生演奏ヒップホップ。ネイト・スミスがその場で思いついたビートをドラムで叩き、ラッパーのコカイがフリースタイル(=即興)でラップを乗せた。これぞジャズドラマーによる至高のヒップホップ。