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〈にしのや〉西野大士が集めるポップなワークウェア。働く男の姿に憧れて、辿り着いたアーカイブの極致

かっこいい大人は今何に惹かれるのか。〈にしのや〉主宰・西野大士が、新たに集め始めたアーカイブは、スタイルやクリエイション、さらには生き方にまで大きな影響を与えていた。

photo: Shinsaku Yasujima / text&edit: Keiichiro Miyata

働く男の姿に憧れて、辿り着いたアーカイブの極致

スーツからワークウェアへ。自身の経歴と密接に関わるファッション遍歴を持つ西野大士さん。
「僕にとって服は、生活の道具なんです。社会人になってからは、服=働く男の服、という考えが自然と自分に根づいていきました」

ポップなワークウェア収集が始まる転機は、2014年のこと。「ブルックス ブラザーズを退社し、独立して一人でオフィスにこもるようになりました。通勤手段は電車から自転車に。そうなると、どう見られるかより、どれだけ動きやすいかが日々の装いで大事なことになって。働く男の服への興味が、ホワイトカラーからブルーカラー中心のワークウェアにシフトしていきました」

今では、さまざまな労働着のアーカイブがクローゼットを彩る。「なぜ、ワークウェアは派手なのか。例えば、消防士や救助隊のユニフォームは、危険な現場で視認性を良くするため、ビビッドな配色に。配達員の作業着は、街での広告塔も兼ねて、目立つ位置に大きなロゴが付いています。1970〜80年代には、コカ・コーラの配送員のユニフォームに憧れて入社する人がいたほど、世の中にインパクトを与えたものも。普段の着こなしに一点取り入れただけで、街中で目立つのは当然のことですよね。必要に駆られてデザインされたワークウェアが、今ではファッションのスタンダードになっている。

その佇まいに惚れてサンプリングして服を作ったこともありますが、本物には敵いません。よれた感じや、個体差のあるリペア、消防団の分団を表す地名が無造作に手描きされていたり、そこに何かが乗り移るんでしょうね。だから、ヴィンテージショップで出会うと“着たい!”という高揚感があり、つい購入してしまう。これは、スーツでは味わえなかった感覚。一度知ると、これ以上のアーカイブはほかに見つかりません」

2022年9月15日発売No.970 BRUTUS「GOOD STYLE for Mr. BRUTUS かっこいい大人をつくる。」で〈にしのや〉主宰・西野大士さんのポップなワークウェア全編を紹介しています。是非チェックを。