色、形、大きさなど一つとして同じものが存在せず、珍奇的な魅力を放つのが自然物。個人コレクターも多い分野ですが、特に化石や鉱物を中心に、巨大だったり、状態が良かったり、極めて稀少価値が高かったりする“国宝級”の標本と対面できるのは博物館ならではです。
国内で発掘された古代生物の実物化石から、日本有数の総合博物館が収蔵する迫力あふれる国産鉱物まで。時に館長や学芸員の趣味や嗜好も投影される名品や珍品の数々を、ぜひ自分の目で確かめてほしいです。
足寄動物化石博物館
アショロア実物化石

太古の北海道で栄えた謎の哺乳類
北海道中東部に位置する足寄町(あしょろちょう)は束柱類(そくちゅうるい)という海棲哺乳類の化石の一大産出地。中でも約2,800万年前に生息し、世界最古の束柱類とされるアショロアの実物化石は必見だ。
「この館では足寄で発見された化石のほか、束柱類の代表格であるデスモスチルスの復元骨格も多数展示されており、束柱類のほぼ全種と対面できる抜群の見応えです」
城西大学水田記念博物館 大石化石ギャラリー
ベラントセア実物化石

大きなヒレを持つ奇妙な体形の軟骨魚
大石道夫東京大学名誉教授が収集した約200点の実物化石コレクションからは、およそ3億年前に生息した軟骨魚類ベラントセアの化石を。
「僕らが想像するサメなどの軟骨魚とは似ても似つかない大きなヒレのついた奇妙な体形に惹かれます。現存する生物とは全く姿や形の異なる古代生物を見ると、その進化ぶりに胸が熱くなりますね」
国立科学博物館
山梨県甲府市産日本式双晶

圧巻のサイズと透明度のハート形水晶
同じ種類の鉱物がある一定の角度で接合してできるのが双晶。中でも昭和20年代に山梨県甲府市八幡山で産出したとされるのがこの巨大な石英の日本式双晶だ。
「水晶掘りの名人とされた藤原利幸さんが収めた鉱物だそうで、高さ20cm程度で母岩付き。この大きさと透明度の高さは他に類を見ず、国宝級の国産鉱物としては外せない名石です」
京都大学総合博物館
市之川産輝安鉱(比企コレクション)

日本が世界に誇る鉱石鉱物の躍動美
銀白色の光沢を放つ柱状の結晶が輝安鉱。その大きさ、美しさにおいて世界随一といわれる愛媛県市之川鉱山で採掘されたものの中でも、この博物館の標本は特に保存状態が良く質が高い。
「国産金属鉱物の代表格がこの市之川産輝安鉱。有名になりすぎたため優良標本の多くが国外に流れた中、日本に残る数少ない大型標本の筆頭です」
玄武洞ミュージアム
アマゾナイト

全米の話題をさらった鮮やかな巨大鉱物
鮮やかな緑色が目を惹く巨大なアマゾナイトの群晶。アメリカ・コロラド州で産出したもので、発見時にはその大きさと美しさから全米で大きな話題を呼んだそう。
「鉱物愛好家の間でワールドクラスの標本として名高いのがこのアマゾナイト。サイズや状態の良さがずば抜けていて、マニアでなくとも一見したいアイコニックな名品です」