Eat

「喫茶店のカスタードは、幸せの一掬い」。難波里奈さんが薦める、東京の名店と甘いもの

カスタードを使ったメニューは、コーヒーや紅茶と相性が良く、喫茶店では絶対に外すことができないと、純喫茶通の難波里奈さん。特にこの5軒の甘いものは、わざわざ目指して食べたいほど、どこにもない極上の逸品。

初出:BRUTUS No.931「なにしろカスタード好きなもので。」(2021年1月15日発売)

photo: Tomo Ishiwatari / text: Emi Suzuki

喫茶店のカスタードは、幸せの一掬(ひとすく)い

文・難波里奈(東京喫茶店研究所2代目所長)

私が思う喫茶店の良さは、ずっとそこにあって、いつ訪れても変わらない空気を漂わせて迎えてくれるところ。昭和の時代に造られたその内装は、格好良さと居心地の良さを突き詰めて妥協なく趣向を凝らした細やかな装飾がふんだんにちりばめられている。店主の好きなものをぎゅっと詰め込んだ宝箱みたいな空間は、一つとして同じものが存在しないので見惚れてしまう。

それだけではなく、お店を営む人たちの心配りや優しさ、一つ一つ丁寧に作って下さるメニューのどれをとっても魅力的で、そこにしかない個性は時代を超えて今もやってくる人たちを惹きつけている。喫茶店ならではのメニューといえば、ナポリタン、オムライス、チョコレートパフェにクリームソーダ……。そして、華やかな盛り付けにときめくプリンアラモードや珈琲のおともに最適なシュークリームなども。

真っ白な生クリームや色とりどりの果物ほどの華やかさはないけれど、卵黄、牛乳、砂糖、薄力粉、バニラエッセンスなどから作られるカスタードクリームはふんわりした黄色の見た目とやわらかな食感でほっとします。その優しい味の食べ物を口に運ぶとき、いつも穏やかな気持ちになるのは、きっとずっと変わらない方法で作られてきたあたたかさを感じるから。

プリンを、クリームを一匙ずつ掬うとき、日常の小さな幸せをそっとかみしめるように満たされるのです。

〈ルーブル〉ローヤルプリン

※閉店

パン屋として昭和25(1950)年に開店。その後、洋菓子を増やしたことで、昭和41(1966)年に店名を変更し、喫茶スペースを設置。「ローヤルプリン」は、中央のプリンが、季節のフルーツや生クリームの家臣を従えた王様のような存在感を放つ。「昔ながらの硬めのプリンで、素朴なおいしさがあります。プリン単体は200円で売られ、お持ち帰りもできます」。

東中野〈ルーブル〉ローヤルプリン

〈平均律〉フレンチトースト

映画『クレイマー、クレイマー』に登場するフレンチトーストをモデルにした一皿。パン・ド・ミの食パンに、プロ御用達の「昔の味たまご」と牛乳、砂糖で作る卵液を染み込ませ、たっぷりのカルピスバターで焼き上げる。「素材の良さが生きています。焼き始めるとバターの香りが店内中に広がり、食欲をそそります」。

学芸大学〈平均律〉フレンチトースト
900円(平日限定)。

〈トリコロール 本店〉エクレア

昭和11(1936)年の創業時の看板商品を、新たに再現したのがこのエクレア。「注文が入ってからシュー生地を温めて、カスタードを詰めて提供。その心遣いがうれしい」。バニラビーンズを使用して香りをつけ、バターを加えて炊き上げたカスタードはコクがありながらも、優しい口溶け。プレーン、チョコがけの2個セットで、クラッシュアーモンドが添えられる。

銀座〈トリコロール 本店〉エクレア
650円。

〈ヘッケルン〉特製ジャンボプリン

半世紀前の創業時から名物として君臨し続けているのが、通常の2.5倍あるジャンボプリン。「ここのカラメルはナンバーワン。マスターの森静雄さんが1時間以上とろ火で砂糖をじっくり煮詰め、輝きを放つ瞬間を見極めているので、ほかにないとろみが!」。スナップを利かせ、プリンを型から外すマスターの手腕もお見逃しなく。

新橋〈ヘッケルン〉特製ジャンボプリン
400円。

〈古瀬戸珈琲店〉古瀬戸オリジナルシュークリーム

甘味を抑えながらもあっさりとしたコクを出すために、マスカルポーネチーズを合わせたカスタードがこんもりと。「ラム酒とチーズの風味が効いた大人テイストのカスタード。温められたシュー生地のもっちり感とのバランスが絶妙です」。リスなど、動物がつまみ食いをしようとしている(?)、お皿も愛らしい。

〈古瀬戸珈琲店〉オリジナルシュークリーム
550円。