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飲む

料理研究家・長尾智子の毎日のティー。「なんでも混ぜて、 自分でティーバッグを 作って飲む」

4つ並んだ大きなカゴのうち、3つにはティーバッグなどが入っていて、1つにはコーヒー関連のものが整然と仕舞われている。その比率が、長尾智子さんのお茶との付き合い方を表している。シンプルに見えて複雑で、適当なようでいて丁寧な、毎日の楽しみ方を聞いた。

photo: Shingo Wakagi / text: Toshiya Muraoka

昔からの習慣で、自分でティーバッグを作るんです。人数が多い時にはそのまま淹れたりもするけれど、大きなポットって洗う時に意外と水を使うでしょう?確かに茶葉が開かないとか、気になることも少しはあるけれど、人数が少ない時や普段自分がお茶を飲む時には、ティーバッグを捨てるだけっていう方が簡単でいいなって。

ポットで淹れると飲みきれなかったり、温度が下がってしまったりもしますから。飲みきるには、ティーバッグってすごくいいと思います。ハーブ系でもスパイス系でも、2、3分置けばきちんと味が出ますから。自分でティーバッグを作る時には、例えばヨモギとスギナとビワ、それからほうじ茶を混ぜて缶に入れておくんです。

ヨモギやスギナだけだといわゆる薬草茶の風味が強くなってしまうので、ほうじ茶とか、炒った茶葉を入れておくと飲みやすくなります。そうやって自分でブレンドした茶葉をティーバッグに入れて、作り置きしておくんです。1人分ならほんのひとつまみで十分。

燻香の強い京番茶もすごく好きなんですが、苦手な方に出す時には、京番茶とほうじ茶を半々にしています。もしも“燻香好き”ならば、おすすめはラプサン・スーチョン。松の煙で燻した紅茶なのですが、アッサムなんかのミルクティー系の紅茶にひとつまみ入れると、ほんの少しの香りづけで、とてもおいしく深い味わいになりますよ。

私、なんでも混ぜる習性があるんですよ。砂糖でも塩でも、自分の好みにブレンドしてしまう。お仕着せが嫌いなんでしょうか(笑)。〈マリアージュ フレール〉だって、もちろんそのまま飲んでもおいしいんです。完璧にブレンドされていると思います。でもルイボスのマルコ ポーロに、砕いたシナモンを一緒に入れると、もっとおいしい(笑)。

シナモンはスリランカ製のものが香りがすっきりと爽やかなのでおすすめです。ルイボスの茶葉と一緒にシナモンを入れてティーバッグを作って、ちょっと長めに時間を置くと、甘味が出るように思います。

ほかにもレモンとショウガのスライスを干しておいて、両方あるいはどちらかを一緒に入れてもいい。生のレモンを使うと酸味が強いレモンティーになるけれど、ドライのレモンを使うと風味がレモンになる感じ。香りづけに使うようなイメージでしょうか。冬場でも3日天気がいい日が続くとしっかり乾燥してくれます。ルイボスにドライのショウガもおいしいですよ。後味にショウガが香る。

既製品でも、ミントのティーバッグは結構使い勝手がいいんです。私はミントの味だけだと単純すぎるように感じてしまうのですが、例えば台湾の烏龍茶、高山茶をベースにして、そこにミントのティーバッグを一緒に入れるとすっきりした後味になって悪くないんです。

ハーブはフレッシュに勝るものはないと思いますが、なるべく香りのいいティーバッグを見つけられるといいですよね。高山茶は何煎も淹れることができるので、途中でミントのティーバッグだけ替えたりしてもいい。私は煎茶にもミントを入れて飲んでいます。

〈HACKMAN〉のケトル
ケトルには強い愛情があるわけではなく、沸騰しやすいものを選ぶ。〈HACKMAN〉ほか、アウトドアブランドのものを使用。

ブレンドのコツは、まず好きなベースのお茶を決めて、それに風味づけのハーブや個性の違うお茶を足すということ。そのうち、適当に混ぜても味が決まるようになりますよ。私は、コーヒーは飲むよりも淹れる方が好きなんですが、どこか緊張するんですよね。背筋を伸ばしてコーヒーを淹れることは大好きなんです。でも、このストレスは何だ?って思い当たったのは、キチッと集中して淹れなければっていう緊張感(笑)。

私にはお茶の方が気楽な感じがするんです。ティーバッグにする気楽さというか。夕方遅めから友達がやってきて、ゆっくりお茶を飲み始めてそのまま日が暮れてお酒を、っていう晩ご飯への流れが、私の理想的なお茶の時間です。