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長井短「優しさ告げ口委員会」:プロ清掃の人

演劇モデル、長井短さんが日常で出会った優しい人について綴る連載エッセイ、第16回。前回の「忘れない人」も読む。

text&illustration: Mijika Nagai

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先月は地方で撮影の仕事があって、久しぶりにホテルに泊まり込んだ。4泊5日の短い旅だった。普段旅行に行く時私は、色んな場所に行きたいから1泊ごとに宿を替える。だけど仕事となれば話は違って、当然だけど同じホテルに留まり続ける。それが私にとっては結構新鮮な体験で、そもそも部屋を誰かが片付けてくれるという神のシステム「客室清掃」への耐性がない。

だから2日目の夜、疲れきって部屋に戻った時のあの美しさは衝撃だった。撮影の朝は早く、集合時間5分前に目覚めた私には朝の記憶がない。それはつまり、めちゃめちゃの状態で出ていったということである。きっと寝巻きは床に散らばり、鼻をかんだティッシュもその辺に落ちていただろう。洗面所には髪の毛が落ちまくり、ちょっとこぼしちゃった化粧水の滑りもあったかもしれない。

それが全部、なーい!何もかも全部綺麗になっているのだ。髪の毛一本落ちていない。びしょびしょにしたバスマットは新しいものに替わっているし、ピンと張ったベッドの上には新品の寝巻き……こんなの、年収100億の生活だ。それを私たちは、ビジネスホテルに連泊するだけで体験できるんですよ?

長井短「優しさ告げ口委員会」:プロ清掃の人

この世の奇跡である。「客室清掃」を、あって当たり前だと思うのは簡単だ。ホテルってのはそういうものだと冷静に捉えることもできる。

でも、そんなの勿体無い。誰かが部屋を片付けてくれる。私だけのために。誰かの時間が、私の快適のためだけに使われている。それは、お金を払ってようが払ってまいが当たり前のことじゃない。全ての清掃スタッフさんに、いつも快適をありがとうと伝えたい。

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