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ブックアーティスト・太田泰友の棚。「表現の可能性を広げる、本作りの道具たち」

写真家や陶芸家など、プロフェッショナルたちの自宅やアトリエの棚には、それぞれの専門分野の真髄が見え隠れする。棚板の素材や寸法にも職種ならではの理由があり、棚に並ぶ多種多様な道具から、創作の軌跡が見えてくることもある。いつもは目を向けられることのない、働くプロの棚を紹介。

photo: Yoichi Nagano / text: Hisashi Ikai / edit: Tami Okano

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表現の可能性を広げる
本作りの道具たち

文字や図版を紙に印刷してから折って綴じれば、基本的には本の形を成す。しかし、素材の組み合わせや目的によって、その形態は無限に変化するもの。本とアートが融合したところには、新しい表現の可能性がある。その可能性を追求するブックアーティストの太田泰友さんのアトリエを訪ねると、壁の棚には、本作りに必要な道具がずらりと並んでいた。

「こうした製本の道具は、日本では一般に販売されていないので、ドイツから輸入しているんです」
棚の最上段右側、2つの支柱が上方に伸びたものは糸かがり台。下の万力のような鉄製の機械や大きなハンドルが付いた木製の器具は、本をぎゅっと圧縮するためのプレス機。このように、手動の道具を好んで使うのは、指先で感覚を確かめながら、細かな調整ができるからこそだと太田さんは話す。

道具の傍らには、珍しい形の本も並べられている。椅子もレモンも、どんなものでも本にしてしまう太田さん。どうすれば、棚に並ぶ素朴な道具だけで、創造性豊かな作品が作れるのだろう。

「作る技術と同じくらい大切なのは、発想力なんです。どのような形、機能、役割を持てば本と呼べるのか。本とは一体どんな存在なのか。そんなことを考えながら、作業に最もふさわしい道具を使ってイメージを大きく膨らませていくだけです」

ブックアーティスト・太田泰友の自宅の棚
都内の住宅街にある一軒家を改築したアトリエ。道具棚のある1階が作業場で、2階に作品を保管。写真左手、青い紙の上の糸は、本をかがるための麻糸。

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