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音楽批評家、翻訳家・大西穣が選ぶ、“普段使い”でき、数分でグッと入り込める3曲

星の数ほどあるクラシック曲は、聴き方も楽しみ方も人それぞれ。気持ちを落ち着かせてくれる曲から幽体離脱を促す曲まで?クラシック通27人が極めて個人的なテーマで選んだ3曲を一挙に公開します。

Text: Aiko Iijima, Konomi Sasaki, Saki Miyahara / Edit&Text: Emi Fukushima

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クラシックの
内なる「今」の声を聴く

コテコテのクラシックの名曲というよりは、現在の生活の中でお茶を片手に楽しめるような「普段使い」できる曲を選びました。特にこの3曲は、数分の中に、作曲家や演奏家の技巧が存分に入っていること。(バッハならば演奏が)特定の時代様式に寄りかからず、現代的な響きがすること。

音楽のジャンルの中で、クラシックにしかないレベルの、モチーフの反復や構造のクオリティがあることを条件に挙げています。1は、ピアノの伴奏が旋回するように和声づけされ、旋律も和声づけも巧みな美しい曲。

2は、1982年生まれの若手作曲家、ショウによるもの。楽器のアプローチに血が通っているので、繊細な表情の違いが楽しめます。

3も84年生まれの若手、オラフソンのピアノ。極めて正確な打鍵と、現代的な詩情を共存させた鮮烈なバッハの解釈。ダイナミクスの使い分けや、レガート、スタッカートの間にある無数の表情に注目して聴くのも楽しいです。

1. 「バイオリンとピアノのためのノクターン(夜想曲)」/リリ・ブーランジェ

『リリ・ブーランジェの思い出に』
『リリ・ブーランジェの思い出に』演奏:エミール・ナウモフ(ピアノ)、オリヴィエ・シャルリエ(バイオリン)ほか/ブーランジェは作曲家の登竜門・ローマ賞を女性で初めて受賞。マルコ・ポーロ/廃盤(CD)。

2. 「バレンシア」/キャロライン・ショウ

『キャロライン・ショウ:オレンジ』
『キャロライン・ショウ:オレンジ』演奏:アタッカ四重奏団/オレンジがなるまでの標題音楽的なコンセプトを持つアルバム。ノンサッチ・レコード/輸入盤:オープンプライス(CD)。

3. 「前奏曲とフゲッタト長調 BWV902」/バッハ

『バッハ・カレイドスコープ』
『バッハ・カレイドスコープ』演奏:ヴィキングル・オラフソン(ピアノ)/新時代のピアニストとして活躍するオラフソンによる、バッハの様々な側面に光を当てたアルバム。ドイツ・グラモフォン/¥2,800(CD)。

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