過去と未来、一瞬のように過ぎゆく
人生の残酷な美しさを垣間見る
近代オーケストラが好きではないので、基本的にはバロック期のものを愛聴しています。スモールアンサンブルによる緊密な演奏はジャズ/ロックを通ってきた者には馴染みやすいですし、指揮者があまり威張っていないのもバロック音楽の良さです。挙げた3曲はよく聴いているもの。過去からここまでの人生がほんの一瞬だったような気持ちになり、すべての未来もまた一瞬のうちに過ぎ去るということを覚悟させられます。
モンテヴェルディ作曲の2の歌詞の一節に出てくる「Cruda Belta」(残酷な美しさ)という言葉は人生の言い知れぬ儚さ、あてどなさをよく表していて、日々あたふたしている自分を時空の離れたどこか別の場所(天国?)から眺めているかのような錯覚にいつも襲われます。幽体離脱とでも言いますか、疲れ切った夜に暗い帰り道を歩きながら聴いていると、自分が人生だと思っているものは誰かの夢でしかないように本当に思えてきます。
1. 「Pur ti miro」/モンテヴェルディ
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2. 「Si Dolce È’I Tormento」/モンテヴェルディ
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3. 「Première Leçon de Ténèbres pour le Mercredi Saint: I. Incipit
Lamentio」/フランソワ・クープラン
