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語る音楽家、語られる音楽家:坂東祐大が語る、朴 葵姫

音楽家・坂東祐大さんが語る、クラシックギタリスト・朴 葵姫。

illustration: Yoshihumi Takeda / text: Yuta Bando / edit: Katsumi Watanabe

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坂東祐大が語る、朴 葵姫

数年前、コロナ禍で外出が制限されていた頃、たくさんの音楽家がコンサートやライブの代わりに、演奏の動画で発信していましたよね。そんな中、偶然SNSで出会った朴葵姫さんのクラシックギターの演奏に強く心を惹かれました。

朴 葵姫

クラシックギターはクラシックの世界に隣接しながらも、完全に内側でもない世界です。クラシックの作曲家が作ったオリジナルのレパートリーも、編曲された作品も演奏されますが、オーケストラの中に常に登場する楽器ではない。しかし、有名なギター協奏曲もあるし、オペラにも時折登場する。そんな関係です。

出身校の東京藝術大学にはギター科はなく、あまり楽器との接点はなかったのですが、僕の作曲の恩師である故・野田暉行先生が名ギタリストの福田進一さんのために新作を書かれた機会もあり、いつかはクラシックギターのための作品を作曲してみたいと思っていました。そんな中、葵姫さんの確かな技術とうっとりするような音楽的な品の良さに惹かれて、リリースされていたアルバムをむさぼるように聴いたんです。

昨年、豊中市立文化芸術センターで日本センチュリー交響楽団さんから、新作オーケストラ作品を書く機会をいただきました。いくつかプランを考えたのですが、ずっとチャレンジしてみたいと考えていたギター協奏曲を書きたいと思い立ち、葵姫さんにオファーさせていただいたところ、快諾していただけました。

協奏曲の作曲も難産だったのですが、ギターパートも大変難しい作品に。初演は非常にスリリングで、豊かな時間となり、今でも忘れられません。そんな葵姫さんが新たにバッハの作品集をリリースされました。裏話を伺ったところ、ものすごくストイックなレコーディングであったとか。拝聴したところ、印象は真逆で、非常に豊かな音楽が広がっています。お薦めの一枚です。

坂東祐大が選ぶ3枚

新作『Bach』はすべてバッハの楽曲を取り上げた一枚。
韓国公演を録音した『The Live』
『スペインの旅』は、かの地の持つ「優しさ」と「情熱」を共に織り交ぜて表現している。

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