石若 駿が語る、レオ・ジェノヴェーゼ
僕が大学へ入学した2011年頃、世間を席捲し始めたベーシストのエスペランサ・スポルディングの音楽が好きになり、YouTube動画を掘り漁っていたんです。彼女のバンドには、まるで映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウのような異彩を放つピアニストがいることに気づいて。それがレオ・ジェノヴェーゼでした。存在感はもちろん、演奏に関しても、アメリカをはじめ、世界各国のジャズの広がりや歴史を細かく学び、熟知しているような、確固たる強さを感じた。彼のトリオ作『Haikus I I』をよく聴きましたね。
いつしか、僕にとってヒーローのような存在になっていたレオ。なんとBanksia Trioのベーシストである須川崇志さんは、アメリカ留学時に同期生だったそうで。事あるごとに当時の貴重な話を聞かせてもらいました。
17年、僕と須川さんが参加した西口明宏サックストリオで、デトロイト・ジャズ・フェスティバルへ出演した時、ウェイン・ショーターのカルテットで弾くレオの生演奏を聴くことができたんです。どれだけ自由な演奏の展開になっても、レオはウェインのコンポーズを熟知し、すべてを把握しているように演奏していました。この時の模様は『Live at the Detroit Jazz Festival』で聴くことができます。
フェス出演の数日後、NYでサックス奏者のウーリー・グールヴィッチと西口さん、須川さん、そしてレオとレコーディングしました。ウーリーと西口さんのオリジナル曲を、それぞれ1曲ずつ。そして18年の須川さんのリーダー『Outgrowing』には、レオも参加し、さらに日本ツアーを行うため来日したんです。僕は仙台公演を鑑賞し、打ち上げでハングアウトしましたね。憧れの存在が、いつしかリアルな存在のヒーローになることもあるんですよね。