石若 駿が語る、細井美裕
細井美裕さんと出会ったのは僕が大学2年生の頃。東京藝術大学の音楽環境創造科に在籍し、今は演出家として活躍する額田大志率いる、オリジナルのミニマルミュージックを演奏するバンド、東京塩麹に参加した時のこと。僕は打楽器、細井さんはボイスパフォーマンスで参加。初対面からとにかくパワフルな人という印象でした。
彼女はもともとメディアアートに興味があり、慶應義塾大学卒業後、山口情報芸術センター(YCAM)との仕事を徐々に始めました。共同制作の誘いがあり、2019年に『細井美裕+石若駿+YCAM新作コンサートピース《Sound Mine》』を制作したんです。この公演は、舞台装置と音響の効果により、会場にいる観客が、別の空間にいるような感覚を得られ記憶を喚起されるというもの。
細井さんは演出プラン、装置の構想など、すべてを担っていた。一緒にYCAM館内はもちろん、さらに山口県内で独特な残響の得られる施設へ出向き、空気の響きの録音もしていました。もちろん本番ではインカムで照明などに指示を出し、ライブ演奏パートになれば、ボイスパフォーマンスをするという。それまでにアイデアを実現するために奮闘する姿を見ては、細井美裕、恐るべし。と常々思いました。
そんな細井さんは、自分にも厳しいけど、“僕ら”にも厳しい。僕がモヤモヤした活動をしていると、グサッと刺さる言葉を投げかけてくる。一番強烈だったのは「石若駿は、いつ石若駿になるんだ⁉」という一言。僕が自分の作品に注力できていないと、「表現方法を持っているんだから、自分の作品を作ってよ」と強く言ってくれる。日々の活動の中、なにか迷った時は、そんな彼女のビッグ・ラヴな言葉を思い出しては、我に返っています。