『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』
創作を志す人たちにとっては、多くの示唆に富んだ書物であると思う。
人類は長いあいだ「意識」というものを持たずに生きてきた、というのがジェインズの主な主張だ。人類の歴史を振り返れば、いわゆる「意識」が生まれたのは、わずか3000年ほど前のことに過ぎない。それ以前の人間は右脳で神の声を聞いて、それを頼りに行動してきた。つまり自己というものを持たなかったわけだ。
しかし人々が農耕社会に定着し、文明を築き、文字を得て、その結果意識を身につけたとき、神の声はもう聞こえなくなってしまう。人類にとって、どちらの状態が本当に幸福だったのだろう?
とても大胆な仮説だが、読み進んでいくうちに、その広大な世界観の中にずるずると引きずり込まれていく。多くの考証、例証を並べた、とても説得力のある本だ。創作を志す(つまり天の声を聞こうとする)人たちにとっては、多くの示唆に富んだ書物であると思う。