『ジャズ・イズ』
ジャズへの深い愛に満ちた書物だ
ジャズは今でも演奏され続けているし、聴かれ続けている。新しいかたちのアクティブなジャズも生まれ続けている。新しいジャズには新しいファンがついていく。しかし誰がなんと言おうと、ジャズが真正の、純粋な意味での「神話」であった時代は過ぎ去ってしまったし、もう戻ってくることはないだろう。
ビリー・ホリデイ、チャーリー・パーカー、クリフォード・ブラウン、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーン……そういう人たちはもう二度とこの世界に現れない。だって二度現れるようなものは、そもそも神話とはなり得ないから。
ナット・ヘントフは、そのようなジャズの神話の時代を語る「語り部」だ。ジョン・コルトレーンは言う、「音楽が語れないことを、どうして言葉が音楽の代わりに語れるんだ?」と。実にそのとおりだ。しかし音楽がすべてを語りきれないことも、少しはある。ナット・ヘントフはその「少しのこと」をとりあげ、誠実に謙虚に優しく語る。ジャズへの深い愛に満ちた書物だ。
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