『生きるよすがとしての神話』
いつ、どこを開いて読んでも「なるほどな」と肯いてしまう。
何度も何度も手にとって読んでしまう本がある。最初から最後まで読み通すのではなく、適当にページを開いて、適当なところから適当なところまで読む。この本は僕にとってのそういうタイプの本の典型だ。
いつ、どこを開いて読んでも「なるほどな」と肯いてしまうところがある。キャンベルの本はどれも深い示唆に富んでいるが、どれか一冊だけといわれれば、やはりこの本を挙げることになるだろう。キャンベルは丁寧に親切に論をひとつひとつ展開し、飛田茂雄さんの翻訳も正確で読みやすい。
人は ー 意識的にせよ無意識的にせよ ー 共同認識として「神話」を持たないことには、うまく自然に生きていくことはできない。十全に生き延びていくことはできない。それはとりわけ小説を書く人間にとって、きわめて重要な意味を持つ命題となる。神話と物語は、ある意味では表裏一体であり、同義であるわけだから。