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村上春樹の私的読書案内『馬に乗った水夫 ジャック・ロンドン、創作と冒険と革命』

村上春樹が自宅書棚から選んだ、手放すことができない51冊の本。私的な読書案内文と共に。

Photo: Keisuke Fukamizu / Text: Haruki Murakami

『馬に乗った水夫 ジャック・ロンドン、創作と冒険と革命』

僕はジャック・ロンドンのファンだ。

僕はジャック・ロンドンのファンだ。誕生日が同じということもあり、僕の誕生日にはワインを開け(『白い牙』の狼の絵のついた「ジャック・ロンドン」ワイン)、まとめて2人分を祝うことにしている。彼がかつて所有していたカリフォルニアのワイナリーも訪れたことがある。なかなか素敵なところだった。

そんなジャック・ロンドン・ファンの僕が愛読してきたのが、この彼の伝記『馬に乗った水夫』だ。ストーンの筆致は決して伝記的ではなく、まるで「ついさっき見てきたような」描写が次々に現れて、「ほんとかよ」と眉に唾をつけてしまうところもあり、専門家からは嫌われているみたいだが、そんなことはぜんぜん気にしなくてもいい。だってジャック・ロンドンの人生そのものが飛び抜けてシアトリカルなのだがら。

本書(ハヤカワ文庫NF)は長らく品切れになっていたのだが、早川書房が「ノンフィクション・マスターピース」としてめでたく復刊させてくれた。

『馬に乗った水夫 ジャック・ロンドン、創作と冒険と革命』アーヴィング・ストーン/著