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村上春樹の私的読書案内『All the Songs—The Story Behind Every BEATLES Release』

村上春樹が自宅書棚から選んだ、手放すことができない51冊の本。私的な読書案内文と共に。

photo: Keisuke Fukamizu / text: Haruki Murakami

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『All the Songs—The Story Behind Every BEATLES Release』

ビートルズのレコードを聴くのが2倍、3倍楽しくなる

ビートルズがリリースしたすべての楽曲の精しい解説と、それに関する興味深いエピソードが満載された本で、実に読みでがある。この本が一冊あれば、ビートルズのレコードを聴くのが2倍、3倍楽しくなる。でもなにしろ分厚くて重い本なので、アメリカで買って、買ったのはいいけど持ち帰るのが大変だった。

「キャント・バイ・ミー・ラヴ」に関する裏話。ビートルズは、ポールの作ったこの曲をパリのスタジオで録音し、そのテープをアビーロードのEMIのスタジオに送った。ところがテープの巻き方が悪くて、リンゴのハイハットの音が部分的に消えてしまっていた。

でもビートルズはツアーの最中で録り直しはできない。仕方ないから録音技師のノーマン・スミスがスタジオに入ってその部分のハイハットを叩き、それを入れたレコードを出した。ビートルズのメンバーはその「差し替え」にまったく気づかなかったということだ。今度「キャント・バイ・ミー・ラヴ」を聴くときはハイハットにご注意。

『All the Songs̶The Story Behind Every BEATLES Release』Jean-Michel Guesdon, Philippe Margotin/著

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