『アメリカの鱒釣り』
初めて読んだとき、目の前がすうっと開けるような素敵な気分になった。
この本については今さら紹介・説明するまでもないだろう。でも僕にとってはとても大事な意味を持つ本なので、あえてここに挙げた。
この本を読んだのはやはり大学に入って間もない頃(1960年代の終わり頃)だったと、ずっと思い込んでいたのだが、本の奥付を見ると、藤本和子さんが訳して、晶文社が初版を出したのが1975年になっている(アメリカでの出版は1967年)。だとしたら、僕がこの本を手にしたのは20代後半になってからということになる。意外だった。てっきり20歳前後に読んだと思っていたのだが。
この本を初めて読んだときは、目の前がすうっと開けるような素敵な気分になったものだ。「そうか、こんな風に書いてもちゃんと小説になっちゃうんだ」という、コロンブスの卵的な感動がそこにはあった。そのときは「小説を書こう」というつもりみたいなものはまったくなかったのだけど、その感動の感覚は何年か後、僕が小説を書こうと思ったときに何かと役に立った。