『街の草』
1969年11月に購入、と裏表紙に鉛筆でメモしてあった。
1969年11月に購入、と裏表紙に鉛筆でメモしてあった。大学に入って少しした頃だ。そのとき、ガスカールという作家のことはまったく知らなかったのだが、題名(素敵なタイトルだ)に惹かれ、手にとって読んでみて、すっかり気に入ってしまった。
1930年代のパリで、わけのわからない日々をわけのわからないうちにどたばた、うずうずと過ごす、あまりぱっとしない一群の青年たちの姿が描かれていて、「うん、こういうのってわかるよな」と共感したことを記憶している。見通しのきかない政治的混乱、一人歩きする理想と能書き、間違いだらけのセックス。1960年代の終わりから70年代の初めにかけて、僕もまあだいたい似たような日々を送っていたから。
自伝的な小説だが、ガスカールは1956年に、青春時代を回顧するかたちでこの青春小説を書き上げた。甘さと苦さが、ちょうどいい具合に混じり合っている。