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数字で探る村上春樹

1979年『風の歌を聴け』でのデビュー以来42年。長編短編併せて30作品、翻訳は91作品も手がけ、“物語”を届け続けてきた村上さん。その著作がどのように時代と歩み、影響を与え、読まれてきたのか。数字と著作を絡めて“村上春樹”を探る。

Photo: Yasutomo Ebisu / Text: Kanta Hisajima

全ページ数、翻訳された言語、はたまた小説内でビールが飲まれた回数まで?数えたことのない「こんなに!」を編集部が記録。村上さんの歩みが数字とともに浮かび上がってくる。

1,780 ㎞

国内で発行された本を積み上げたら。

翻訳を除く全作品の厚さを、単行本平均3㎝、文庫本平均1㎝として換算すると、なんと、1,780㎞。高さにすると国際宇宙ステーション(400㎞)を超えて宇宙に。横に倒したとしても本州の長さ(1,500㎞)を優に超える。全世界の発行部数も含めたら途方もない長さになる。

45,521 ページ

村上作品の全ページ数。

これまでに出版されてきた長編、短編集、エッセイ、翻訳を含む156作品のページ数をすべてカウント。全部読んだ人は、これだけのページ数を読んできたということ。これから読み始める、という人なら、1日100ページのペースで、約1年3ヵ月あれば全作品を読破できる。

50ヵ国語以上

小説が翻訳されている言語の数。

英語やスペイン語、中国語などはもちろん、デンマーク語、ヘブライ語、アラビア語翻訳などでも出版されている。国にすると、世界中のトヨタの工場がある国の数以上。村上作品のために日本語を学ぶ翻訳者もいるほど。結果、様々な言語で翻訳されファンを増やし続けている。

長編 3年、 短編集 2年半、 翻訳 5ヵ月

書籍が発表される平均ペース。

1979年に講談社が主催する「群像新人文学賞」に応募し、『風の歌を聴け』でデビューして以来、作家としてのキャリアは43年目。その間に発表した書籍は、長編14タイトル、短編集16冊、翻訳を91冊。とりわけ驚異的なペースの翻訳は、日本で海外文学が浸透したきっかけにも。

252 回

小説の登場人物がビールを飲んだ回数。

あるときは料理をしながら、またあるときは音楽をかけながら。作中には、実に多くのビールが登場する。『風の歌を聴け』では主人公と友人の「鼠」がひと夏でプール一杯分のビールを飲み干したという文もある。エッセイでも村上さんはたびたびビール愛を書いている。

202 回

小説の作中でかかってきた電話の回数。

シチュエーションは様々だが、作品の序盤には突然の電話がよく鳴る。ビールと同じようにお馴染みの描写だ。『ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編』の冒頭では、スパゲッティをゆでる主人公に、突然電話がかかってくる。その電話をきっかけに物語は動きだしていく。